更新日:2023年04月19日 20:51
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勘違いの都知事と都議に喝!首都高渋滞解消に、料金所撤廃、Suica導入論は無意味

 先日、首都高研究家として驚愕すべきニュースが報道された。  小池百合子・東京都知事が、9月9日の都議会本会議で、公明党の野上純子都議の質問に対し、「首都高速道路の渋滞解消策として、情報通信技術(ICT)の活用などによる本線料金所の撤廃を、国や首都高速道路会社に働き掛けていく方針です」と答弁したというのだ。  報道によると、「本線料金所は減速や合流による慢性的な渋滞が起きており、都は料金所の撤廃で円滑な通行を実現したい考え」なのだという。これはもう、驚くしかない。なぜなら、首都高に限らず全国の高速道路において、料金所渋滞はすでにほとんど消滅しているからだ。

首都高=渋滞して大変!のイメージが強いと思いますが……

首都高渋滞の原因=料金所があるからではない

 11年前の国交省のデータによると、平成19年3月、首都高のETC利用率73%の時点で、首都高の本線料金所の渋滞量は、平成15年度と比較して95%減少している。現在、首都高のETC利用率は96%。本線料金所が原因で発生している渋滞など、ほとんど存在しない。

首都高本線料金所渋滞は激減した。国土交通省発表資料より

 いや、確かに、しろうと目には本線料金所で渋滞が起きているように見える箇所はある。たとえば3号線上りの用賀や、4号線上りの永福などがそれだ。しかしそれらは、料金所の存在が渋滞を引き起こしているとは言えない。料金所に併設された入り口からの合流とカーブや勾配が組み合わさった、複合的な減速が原因だ。  唯一、湾岸線東行きの大井料金所だけは、料金所の位置が渋滞の原因になっていた。  大井料金所は、料金所のわずか200mほど先で、湾岸線方面と中央環状線方面への分流があった。しかも同じポイントに大井南入口からの合流車両があり、その一部が湾岸線方面に向かうため、左から右へと連続して車線変更するクルマがあった。その「織り込み抵抗」によって減速波が発生。渋滞を発生させていた。  このように説明したところで、理解できる人は多くはないだろう。現在の首都高の渋滞は、昔のように「料金所があるから渋滞する」とか、「都心環状線が片側2車線しかないからどうしようもない」といった単純なものではなくなっている。  その大井料金所も、昨年5月に運用が終了している。

撤去工事当時の大井料金所

 今年4月には大井ジャンクションの分岐も南寄りに変更され、大井南入口は中央環状線方面への専用入口に変更。これによって織り込み交通による減速は消滅し、渋滞はかなり緩和された。昨年5月には、平和島料金所も運用を終えているが、こちらは以前から渋滞は起きていなかった。なのになぜ廃止されたかというと、首都高の距離別料金所導入等によって東京料金圏および神奈川料金圏の区分が撤廃され、料金所そのものが必要なくなったからだ。必要ない料金所はないほうがいい。 【過去記事】⇒首都高からひっそりと消える2つの料金所。その理由は?

撤去された大井料金所と平和島料金所(首都高HPより)

 その他本線料金所撤去の例としては、湾岸線西行きの浮島料金所があるが、これも大井・平和島と同様、料金圏の廃止で必要なくなった。  しかし、他の本線料金所は、現状、料金徴収に必要だ。もちろん、ないほうがよりスムーズではあるが、廃止したところで、首都高の渋滞が減るわけではない。
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料金所廃止は東京五輪のデメリットになる
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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