更新日:2023年04月18日 11:21
カーライフ

日本一売れるクルマN-BOXより、タントが優れているところは?

『仁義なき戦い』と言えば深作欣二監督、菅原文太主演の東映ヤクザ映画ですが、もとは『週刊サンケイ』掲載のノンフィクション連載でありました。余談ですが、本誌SPA!はその『週刊サンケイ』がリニューアルされて誕生。もう30年以上前の話です。そんな仁義なき戦いが、今も繰り広げられているのが軽自動車業界。今回は登場人物の1人(クルマだけど)、タントの話です。 タントMJブロンディ改め永福ランプ=文 Text by Shimizu Souichi 池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

カーマニアの末路はタントの助手席で在りし日を夢想することで決定しました

 ダイハツ・タントという軽自動車は、カーマニアにとって最も忌むべき対象でありました!  第一に、カタチがあまりにも情けない。真四角の角を丸めたスタイルは、動く託児所とでも申しましょうか。あるいは保育園のおねえさんが幼児を何人か積んで移動するアレ。アレなんつーの? お散歩カー? ダイハツ・タントは、あのお散歩カーにエンジンを付けたみたいな存在だったのです。まさにカッコ悪さの極致!  そんな忌むべきクルマ・初代タントが登場したのは、今から16年前のことでした。その頃のタントは、カーブのたびに引っ繰り返るんじゃないかと思うほど大きく傾いて、性能的にも「お散歩以上の速度はムリでちゅ~」みたいな感じでした。  だいたい、あんなに天井ばっかり高くして意味があるのか。背の低い女性が駐車券をサンバイザーに挟もうと思ったら、ダンクシュートしないと届かない! このムダな空間が耐えられない! せめて網棚付けろや! 当時はそう思いました。  そんなクルマが、一時は日本一売れるクルマの座に君臨したのです。カーマニアにすれば、山○花○がミス・ユニバース日本代表になったみたいで、これほど情けないことはありませんでした。  が、ライバルメーカーも、タントのバカ売れを黙って見てはいなかった。まったく似たような室内バカ広の軽自動車が、次々と登場したのです。スズキのパレットはコケたものの、ホンダのN-BOXはタントをブチ抜き、プリウスやアクアもブチ抜いて、現在2年連続で販売台数日本一の座に君臨。ダイハツの蒔いた種をホンダが収穫しております。  N-BOXとタントを比べると、使い勝手ではタントのほうが若干上。なのに売れ行きはN-BOXがブッチ切り。なぜなのか?  考えられる最大の要因はデザインだ。やっぱ託児所みたいなタントより、N-BOXの「機能的なただの箱」のほうが、男女問わず好まれたのではないか?  となると、次のタントはデザインをN-BOXみたいに角張らせてくるかもしれない。常に二番煎じのマネッコ後出しジャンケンが勝利を得てきた仁義なき軽自動車業界。たぶん次のタントはN-BOXソックリになるはず!  そして登場した4代目タント。あ、託児所のままだ……。
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見た目は託児所テイストですが、走りはビックリするぐらいよかったです(初代比)! ヒトもクルマも見た目だけでは判断できませんね

 ダイハツ開発陣によると、「タントはあくまで親しみやすいカタチで戦います!」とのこと。その意気やよし! ボディカラーも親しみやすさ全開! きみどり、きいろ、そしてピンクもあるヨ! ピンクのタントで走ってると、オムツの取れてない幼児に戻った気分全開でちゅ~!  でも、カーブを曲がってビックリ。ものすごく安定してる! なんだこれ! こんなにムダに背が高いのに信じられん! 想像を絶する性能の向上ぶり! 幼稚園児がオリンピック選考基準を突破したみたいでマジ驚愕!
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メカは新型CVT。CVTなのにギア付きなのです

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タントは介護装備が充実!
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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