大物芸能人と飲んだ素人女子がみた修羅場。キモい!ムリ!
<コラムニスト・妹尾ユウカ>
その日、女友達から「西麻布で22時からAさん(男性芸人)と飲むんだけど来れない?」という誘いを受けたのは20時頃だった。
私が1時間ほど遅れてバーに着くと、そこには女友達と芸人Aの他に二人の男性がいた。一人は男性芸人(以下、芸人B)で、過去にお笑いの頂点を決めるコンテストでグランプリを取った経験のある人。もう一人はアリーナ規模のライブを行う男性アーティストだった。
芸人の二人がいる場にこの男性アーティストがいる光景をテレビで見ることはないため、組み合わせのチグハグさに少し驚いたが、既にかなり酒を飲んだ様子の芸人Aの指示により、私はひとまず芸人Bの横に座ることになった。
そういった場で繰り広げられる会話というのは、巷で行われている下世話な飲み会の内容と大差はなく、内輪ネタで盛り上がる学生のように業界の話に夢中になってしまい、女たちが置いてけぼりにされる瞬間があったりもするし、ベテランアナウンサーだって、人気アイドルだって、酒が進めば「どんな人が好みなの?」とか「経験人数は何人?」といった会話に着地する。
ただ、巷でよくある飲み会と確実に違う点は、「どんな人が好み?」という問いに対して、ガチで好きな芸能人の名前を挙げると、その場で呼んでくれたり、次回、その人と会う場をセッティングしてくれたりもするというところ。そして、「経験人数は何人?」という問いに対して、女たちは彼らのテンションが上がるような回答をするというところ。
私はこういった場にいる女性のことを高級接待嬢だと思っているが、本来の肩書きはグラドル、アイドル、AV女優がほとんど。たまに自称ニートの素人やインスタグラマーがいるが、この手の女性は大体会員制ラウンジに勤めている。(ちなみに私は彼女たちとは違い、ルックスが優れているわけではないし、職業が物書きなので警戒されることがたまにある。)
話は戻るが、徐々にセクハラ取調官と化した芸人Aのマシンガントークにより、この日の飲み会は深夜2時まで続いた。
ようやく解散となり、店から順々に狭い階段を降りると、人気のない通りにはタクシーが3台停まっていた。
芸人Aが各々の住んでいる方面を聞き、遠方へ住む女友達を一番初めにタクシーへ乗せたかと思いきや、男性アーティストの肩を叩き、同じタクシーへ乗せて見送ると、私と芸人Bのことも同様に同じタクシーへ乗せて「途中まで乗せて行ってあげて!」と芸人Bへ声をかけた。全員を男女ペアにして見送った芸人Aはどこか満足気だった。
ここから先はこれまで以上にしょうもない話になるのだが、芸人Bの家と私の家は隣の区にあり、タクシーに乗った当初は「ユウカちゃんの家の前まで先に送るよ」と言っていたのだが、途中で芸人Bは自分の家の方面へ向かうようにタクシーの運転手へ告げた。
私が「明日早いので、途中で別のタクシーを拾います!」という大ウソを言うと、芸人Bは「大丈夫大丈夫!」の一点張りで押し切り、タクシーは芸人Bが住む高層マンションの前に着いた。そこでも私は「このままこのタクシーで帰りますね!」と言ったのだが、芸人Bは過度な泣き真似をするという笑いでなんとか食い止め、結局、私は芸人Bの部屋へ行くことになった。
案の定、芸人Bは「チューしようよ」「エッチさせて」と言って迫って来たが、私が「本気でキモい」「無理無理」と断り続けると、「一人でするから見てほしい」と言ってズボンを脱いだ。私が先ほどよりも強い口調で「マジキモい!汚い!キツい!」と一生分の悪口を連呼しても、芸人Bはそのまま続けた(後になって気付いたのだが、不運にもこの罵倒がむしろ芸人Bのテンションを上げてしまったのだと思う)。
この隙に逃げ出そうかとも思ったが、また押し問答を繰り広げるのが面倒であることと、いつかこうして文章のネタになるのでは?という下世話心が働き、視界に入れなければ特に実害のない芸人Bの一人プレイが終わるのを半目で見届けることにした。
コイツの部屋を出る時、どんな漫才師よりも本気で「もうええわ!ありがとうございました!」と叫びたい気分だった。
誘いをくれたこの女友達は20代前半で活躍するアイドルで、SNSの総フォロワー数は30万人を超える。そして、そんな彼女を誘った男性芸人Aとは老若男女誰でも知っているようなベテランお笑い芸人だった。
そこには芸人2人と有名アーティストが
キモい!芸人からのとんでもない要求
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1997年生まれ。コラムニストとして、「日刊SPA!」「AERA dot.」など多数のWEBメディア・雑誌で執筆。Abema TV「ラブキャッチャー」では副音声、ドラマ「女盛り考察記」は脚本を担当。著書に「今夜、軽率に抱かれてみたくなりました 恋愛強者になれる“女の直感ルール”」がある。
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