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健康不安説の安倍総理に「休んでください」と私も思う。本当に体を壊す前に/倉山満

言論ストロングスタイル

8月19日、3日間の夏季休暇を終え、病院での検査について、首相官邸で記者団の質問に答える安倍晋三首相。身を退くか、居座り続けるか、首相の英断を祈るばかりだ 写真/時事通信社

安倍応援団諸君と同様、私も休んでくださいと思う。本当に体を壊す前に

 権力闘争は過酷だ。だから、どんな手段を使ってでも権力闘争に勝たねばならない。負けた者が何を言おうが知ったことではない。  安倍晋三首相と側近たちは、その言葉通り実行して、史上最長の長期政権を築いた。ならば、政敵が何をしても文句は言えまい。少なくとも、「人の病気を権力闘争の道具に使うな」とは、恥ずかしくて言えまい。  昨年秋の消費増税で景気が悪化しているところに、コロナ禍で世の中に沈滞した空気が漂う。よせばいいのに検察人事に介入して、結果は完敗となったのは記憶に新しい。  国会閉幕後は、自民党の実力者たちは政策そっちのけで、相次いで会合を繰り返している。秋の人事や、1年以内に行われる解散総選挙に向けての動きである。  そんな最中、安倍首相の健康不安が囁かれている。「国会に出てこられないのは、病気ではないか?」との噂も広がる。政界とは「風邪を引けば肺炎と噂が流れ、肺炎になれば、癌、本当に癌だったら死亡説が流れる」世界だ。安倍首相の吐血情報も流れ、先日は7時間も病院に籠っていた。  巷間言われるように政変があるのかどうか知らないが、今後も安倍内閣が続いても何もできないことだけは間違いなさそうだ。今までだって、7年も弱い野党と自民党反主流派を相手にして、何一つ実績が残せなかったのだから、できるはずがない。それどころか、景気回復も疫病対策もできていない。自民党はもちろん、官僚機構に政権担当能力が欠如している現実が明々白々になった。

本当に体を壊す前に内閣総辞職をされてはいかがか

 信者諸君は「安倍首相は働き者である」と褒めそやす。私も休んでくださいと思う。未来永劫。本当に体を壊す前に内閣総辞職をされてはいかがか。  偉大な言論人にして元首相の石橋湛山曰く、「国会に出て国民に説明できない総理大臣は退陣すべきである」と。  昭和6年の話である。時の浜口雄幸首相は前年に狙撃されたが、一命をとりとめていた。しかし、無理に国会に出てきて容体を悪化させた。代理では済まない話も多く、国会が紛糾した。その時に在野の言論人だった石橋は、浜口に退陣を迫った。ほどなくして浜口は、退陣に至る。  時は流れて昭和32年。石橋は首相となっていた。ところが、軽い脳梗塞を起こした。長期の治療を覚悟すれば必ず治る病気である。しかし石橋は自分の信念に従い、「国家に迷惑をかけるわけにはいかない」と退陣を選んだ。わずか65日の内閣となった。  世の中には、身を退くことで国家に貢献する方法もある。
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力を無くした首相でも、最後の武器がある
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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