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<純烈物語>「本来やるべきことができていない」 小田井涼平はいま葛藤する<第68回>

純烈小田井

<第68回>「本来やるべきことができていない」小田井涼平のコロナ禍における葛藤

 新型コロナウイルス感染に関し、この先どうなっていくか確信的に知り得る者は世の中にどれほどいるのだろう。この見えない敵の恐怖はその存在もさることながら、どれほどの時間を費やせば収束・終息するのかが読めぬところにある。  つまり“結果”が見えてこない。こうなってほしいという願望はあっても、その形が確実に訪れるという保証を得られぬまま、地球上の人々が長期戦を強いられている。  当連載や書籍『白と黒とハッピー~純烈物語』にて、小田井涼平の人物像を「物事を結果論で考える」と紹介した。そのスタンスによって、純烈が成り立っている部分をクローズアップするのが意図だった。  物事を結果論で考え「すべてが“なるべくしてなった”でいいんですよ」と、竹を割るかのように言った小田井の目には、その結果が読めぬ今の時代はどう映っているのか――。

小田井涼平から見た2020年

「僕個人は、この2020年という一年はすべてがストップした感じがものすごくしています。もちろん、この特殊な状況の中での気づきや新たな発見もありましたけど、それは純烈が本来の状態にあった上で見つけるのがポジティブなんじゃないかっていう思いが、常にまとわりつくんです。  たとえば、この機に純烈はYouTubeを始めて、料理とかコントとか自分がやりたいことができているのは楽しいし、それをファンの皆さんにも楽しんでいただけることで自分の気も持てる。でも一方では、これって普通の状態でやれるのがいいんちゃうかって考えちゃうんですよね」  世の中がネガティブになるほど、人間はポジティブになれる方法を考える。とくに人前で何かを提供するエンターテインメントへ携わる者たちは、コロナ禍の中で自問自答してきた。  ただ、それは人類にとっての“通常営業”ではなく非日常の事態だからこその行動。それが小田井には、時が止まった中でおこなっているものに映るのだ。  新しいもの、今やれることを形にできるだけでも環境的には恵まれている。小田井も物事をネガティブに受け取るつもりはない。YouTubeにしても、あるいはグループとしてライブ活動ができぬ中で来たドラマ出演等のオファーも、懸命にやっている。  そこで「純烈として活動はできなくても、別の形でファンに楽しんでもらえる」とだけ思えればいいのだが、100%にはならない自身の気持ちに、小田井はぽっかりと空いた穴を見つけてしまう。満たされぬことで生じる空虚感がこの8ヵ月間、ずっと引っかかっていた。
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2020年はなかったことにしたい
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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