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競馬予想の新たな潮流「クッション値」を紐解く

鈴木ショータ氏

鈴木ショータ氏

 2020年9月12日より、JRAの馬場発表に「クッション値」というものが加わった。馬券ファンにとっては予想のファクターが広がったとも言えるが、ライトなファンからすれば、「複雑でよくわからない…」という声もあるようだ。そこで今回は、クッション値の利用の仕方や、データの傾向を紹介していく。

JRAの馬場発表は3種類

 クッション値について説明する前に、まずは3つの馬場ファクターを紹介する。現在、JRAで馬場状態を判断するための材料は、3つある。 ①良~不良  最もオーソドックスなものは、良→稍重→重→不良という4段階の馬場発表だ。最もシンプルであり、誰でも簡単に馬場状態を判断することができる。その一方で、大きく4つに分類されているだけ、とも言えるので、より綿密に予想したいファンには少々物足りないとも言える。例えば、同じ良馬場でも、雨が降った後に乾いて良馬場に回復した馬場もあれば、1週間全く雨が降らず、カラカラに乾いた良馬場もある。不良馬場の場合も同様で、同じ不良発表でも、馬場に含んでいる水分量によって、差異があるのではないか?という疑問がわいてくる。 ②含水率  そこで導入されたのが「含水率」の公表だ。2018年より一般ファンにも公表が開始された。これにより、良~不良の大きな4段階の発表だけでなく、より細かで、客観的なデータを馬場判断に用いることができるようになった。ちなみにトレーニングセンターの馬場(ウッドコースや坂路など)は、以前から含水率が発表されている。含水率や、実際の計測タイムの傾向をもとに、各新聞社が各調教コースの馬場状態を、良~不良の4段階で決定している。  このことからも、含水率は馬場の判断に有効なファクターである。ただし、含水率を見慣れないファンのとっては少々複雑である。さらに、発表されている含水率は、4コーナーとゴール前、さらに芝、ダートごとに発表されており、「結局どれを参考にすればいいのだ?」という状態に陥ってしまうのがデメリットだ。 ③クッション値  クッション値は、2020年9月より公表された新たな馬場ファクターだ。クッション値=「馬場硬度」と、とらえてもいいだろう。数値が大きいほど、馬場は硬い=時計が速くなりやすい、というのが一般的な傾向だ。イメージしやすいように、JRAホームページの内容をお借りすると、日常にあるもののクッション値は以下のようになっている。 調教のウッドチップコース:4 体育マット:5 畳:7 海外の主要競馬場:7~10 野球場の芝:10 ゴムチップ塗装の陸上競技場:22 ダスト塗装の校庭:63 引用元:芝のクッション値に関する基礎知識  結論から言えば、極端に言うと、筆者は上記の①4段階の馬場発表、②含水率は抜きに、このクッション値だけを参考にすれば良いのでは?と現段階では考えている。JRAの馬場情報ページでも、一番上の目立つところにクッション値が掲載され、その下に含水率が掲載されいる。勝手な憶測ではあるが、JRAも、よりクッション値を重視、そして周知したいのでは、と思う。  余談だが、JRAのホームページは、常々見やすいようにバージョンアップされており、特に馬場情報のページは、以前よりはるかに見やすくなっている。もっと賞賛されても良い気はするが、あまりファンの間で話題には上がらないので、ここで紹介しておく。  話を戻すと、馬券検討に必要な情報は、タイムが速いか遅いか、すなわち、スピードが要るのかパワーが要るのか、という部分が大きい。それを推測するには、ひとまずクッション値にだけに注目しておけば、効率が良いと思う。
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クッション値から予想
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元「競馬エイト」トラックマン(栗東担当)。学生時代には中央、地方を全場渡り歩き、フランス、香港、ドバイまで駆け回っていた、根っからの現地観戦好き。『競馬伝道師』として週刊大衆やモンドTV「競馬バトルロイヤル」などでも活躍している。

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