更新日:2022年03月13日 09:26
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岸田首相が避けた入管法改正案の再提出。無法だらけの“日本の入管問題”を終わらせる絶好の機会

大きな反対運動が起き、廃案に追い込まれた「入管法改正案」

入管法改正案

昨年の入管法改正案に対して、多くの人々が反対の声を上げた

 岸田文雄首相は、通常国会での出入国管理法改正案の再提出を避けることを決定している。これには、今夏の参院選に備えて反対論が巻き起こるような法案を出したくないとの思惑があると言われている。  2021年5月に自民党政権が打ち出してきた入管法改正案が、多くの市民の反対によって廃案になったことは、まだ人々の記憶に新しい。この法案が通れば、日本に助けを求めてきた多くの当事者たちが困難を強いられてしまうところだった。  難民申請が却下され、帰国できない事情があるため再申請していた人たちも、それが3回目になると送還対象になってしまう。また、それを拒否すると刑事罰が与えられてしまう。「監理措置制度」が設けられることで、入管が選んだ監理人が当事者を見張り、責任を伴うことになる。行き場のない人たちを追い詰めることになる、人道的な配慮に欠けた厳しい改正案だった。  これを阻止するべく、市民や弁護士、野党議員、芸能人、著名人、そして当事者たちが国会前でシットインやデモ行進をしたり、抗議のファクスを自民党本部などへ送ったり、SNSで拡散していったりと、さまざまな人たちがあらゆる知恵を絞り、それぞれ自分たちができる方法で廃案へと持っていったのだ。

入管の窓口で泣いている人たちの声は、届かなかった

入管法改正案反対 入管問題については、当初は外国人の人権についての関心は非常に薄いものだった。入管の収容施設には在留資格を失った外国人たちが閉じ込められ、職員による激しい虐待を日々受け続けていた。密室であることをいいことに、職員の好き放題に行われていたのだ。そして、その情報は外部には届かなかった。わずかな支援者はいたが、社会運動の中ではマイノリティ中のマイノリティだったといえる。  少なくとも2017年あたりまでは、この問題はまったくといっていいほど知られていなかった。日の光すら当たらない不衛生な収容施設で、職員による暴言や虐待は日常茶飯事。医療放置によって命を落としたり、境遇に耐えかねて自殺者がでたり、いつ出られるかもわからないストレスで精神疾患にかかってしまったり、まさに“無法地帯”の状態だった。  この頃は東京五輪・パラリンピックが決まったことにより、在留資格のない外国人の収容が急激に増えていた。難民と認められなかった人も、日本人配偶者のいる人も、帰れない事情があるにも関わらず問答無用に強制収容された。家族の誰かが捕まり、残された妻や母、子供たちは頻繁に入管へ出向いて、死に物狂いで家族の解放を求めていた。彼らは入管の建物の外や窓口で、泣きながら声を上げていた。
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誰も注目していなかった問題に、いち早く取り組んでいたジャーナリスト
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おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

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