高級食パンブーム終焉の声も「さらに店舗を増やしていきたい」乃が美の出店戦略
空前の大ブームから一転、全盛期の頃に比べると陰りを見せている高級食パン市場。一時は高級食パン専門店に行列ができるほどの人気ぶりだったが、ここ最近では「閉店ラッシュ」や「ブーム終焉」の報道が相次いでいる。
こうした逆風をものともせず、冷静に戦局を見つめているのが乃が美だ。
高級食パンブームの火付け役として市場を切り開いてきた乃が美は、国内250店舗を誇る高級食パン専門店のリーディングカンパニーとして、今後の動向が注目されている。
乃が美は2013年に大阪・上本町に1号店を出店以来、高級食パン市場を牽引し、今や日本全国に展開するほどの高級食パンブランドに成長した。
普通の食パンと比べて高価格帯にもかかわらず、なぜこれほどまでに支持されるようになったのか。
小林さんは「普通の食パンを食べる人にとって、潜在的な“不満”を解消できたのが大きい」とし、次のように説明する。
「当時の社会背景としては、少子高齢化や女性の社会進出の影響でお米の消費が減り、代わりにパンの消費が増えていました。こうしたなか、普通の食パンは耳の部分が硬くて食べられなかったり、サンドイッチにした際に捨てざるを得なかったりといった課題があった。
社内では『美味しいパンはあるけど、美味しい食パンはないよね』と話していて、普通の食パンを食べている方の物足りなさを解消し、喜ばれる食パンが作れたらいいのでは。そう考えるようになり、何度も試行錯誤をして乃が美の高級生食パンが生まれたんです」
だが、高級食パン専門店として出店してから1年ほどは客足が伸び悩み、苦労を経験したという。
これまでになかった値段の高い食パンだったことや、大阪の上本町の店舗が人通りの少ない路地に構えていたこともあり、苦戦を強いられた。
転機になったのは、とある雑誌に取り上げられたことだった。
「創業以来、『歴史に残る日本一のものをつくる』というミッションを掲げ、食パンの品質にこだわっていたので、“いいものを作ればお客様は来る”と思いながら高級生食パンを販売していました。味もさることながら、食パンなのにお土産や差し入れにも喜ばれる商品としての魅力が訴求ポイントになり、ギフト需要を取り込めたのが成長のきっかけになっていると思います。このような普通の食パンとは違う高級生食パンの特徴を雑誌が取り上げてくれたことで、店舗には行列ができるようになり、他の地域へも出店する足がかりとなったんです」
乃が美ホールディングス取締役 営業本部長 小林祐人さんに、高級食パンブームに対するスタンスや事業展開で見据えていることを聞いた。
普通の食パンの「不満」を解消できた高級生食パン
雑誌に掲載されたことで行列ができるように
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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