桜庭ななみ、30代は変化できる10年。「仕事も含めて人生設計していきたい」
昨年10月に30歳の誕生日を迎え、女優としてもますます円熟味を増している桜庭ななみ。東日本大震災から10年後の宮城を舞台に、命と向き合う人びとを描いた主演映画『有り、触れた、未来』(3月10日公開)では、突然の事故で恋人を失った元バンドマン女性の愛実役を演じている。
本作は『グッモーエビアン!』(’12)などで知られる山本透監督による自主制作映画としてはじまっており、クラウドファンディングによる多くの協賛や、監督の想いに賛同したスタッフやキャスト陣の豪華さも話題となっている。
――『有り、触れた、未来』は、たくさんの方々の想いが詰まった作品になったのではないかと思います。
そうですね。山本監督はもちろん、「UNCHAIN10+1」(アンチェインイレブン・アシスタント)という監督のチームのみなさんが、俳優としても、スタッフとしても作品に参加していたので、すごくアットホームな現場でした。作品に対する想いの強さというのも、より一層感じられました。
――本作への出演が決まって、まずはどんなことを考えましたか?
大切な人と離れて10年経ってしまった――その10年ってどういう気持ちなのかなと考えました。長いのか、短いのか……私ははじめ、長い気がしていました。でも、10年が経っても癒えない傷はあるし、傷ついている大人の姿がをその子どもたちが見ていたりもするので、「街が直ったとしても人の心が治ったわけではない」と監督が言っていたんですよね。
震災のとき私は東京にいて、報道やインタビューを見てなんとなく状況を分かっているつもりでいましたが、現地に行くと全然違いました。ですが、決して現地の方々が前を向いていないということではないと感じました。私が現地で感じたことも含めて、この作品で表現できたらいいなと思いました。
――撮影は宮城でのオールロケだったそうですが、現地の方とコミュニケーションを取る機会もあったのでしょうか?
私が演じた愛実は、交通事故で交際相手を亡くしてしまった女性で、震災が直接の原因ではなかったのですが、「この場所でこういう被害があって、どんな避難生活をしていた」というようなお話を伺っていると、震災の悲惨さをとてもリアルに感じました。
――撮影で印象に残っているエピソードを教えてください。
保育士の役だったのですが、エキストラとして集まってくれた現地の子供たちのリアルな声を実際に聞くシーンがあるんです。台詞ではなく、「これってどう思う?」って、ボールを持った人に答えてもらうゲームをしました。その中で、純粋がゆえにこちらが想像もしていないような答えが子どもたちから返ってきて、それが難しくもあり、すごく面白かったですね。
――その、お子さんたちは震災後に生まれているんですよね。
そうなんですよ。でも、そのお母さんたちは震災を経験しているから、子どもたちがお母さんたちをどう見ているか、その気持ちを話してもらいました。子どもたちとのコミュニケーションのシーンは監督もすごく大事にしていたので、その会話のゲームについて書かれた『生きるって、なに?』という本を読み込んで撮影に臨みました。いろんな角度からこの10年という時間を感じてもらえる作品になっていると思います。
――「命」が本作の大きなテーマになっていますが、桜庭さんご自身も生きることについて考えを巡らせましたか?
そうですね。この作品を観て、私にとって『生きるって、なに?』と考えたときに、やっぱり自分はお仕事が大切で、それをなぜ頑張れるかというと、家族がいるからだなと改めて思いました。仕事で家族を喜ばせたいというのが、私の原動力になっていることに気づけたので、この作品から学ぶことはとても多かったと思います。
――ご家族も桜庭さんのお仕事に対してリアクションをくれますか?
あまり頻繁に感想を言ってくれることはないです。新しい作品が決まるとすごく喜んでくれるし、実家に帰ると私の作品が録画されてるので、嬉しいですね。
「命」がテーマの作品に向き合って
家族がいるから頑張れる
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ