東條英機の末裔が語る新しい“神社ツーリズム”の形
「若御毛沼命(わかみけぬ=のちの神武天皇)の4兄弟を巡る神話は、末弟の若御毛沼命を、一子相伝の漫画『北斗の拳』に登場するケンシロウをイメージしながら読むとわかりやすいんですよ(笑)」
来る10月2日と5日、伊勢神宮(三重県伊勢市)の一大神事、「式年遷宮」がいよいよクライマックスを迎える。今年は、実に60年ぶりに出雲大社の「大遷宮」と重なり、加えて、霊峰・富士山も世界文化遺産に登録されたこともあって、まさしく2013年は、「神社のビッグイヤー」となったと言っていいだろう。
近年、「パワースポット巡り」が息の長いブームとなっているものの、神社や神道は、少々小難しく考えられがちなのも事実だが、これを、物腰柔らかいユーモアな語り口で地道に情報発信し続けているのが、神社情報ポータルサイト「神社人」を主宰する東條英利氏だ。
名前を聞いてピンとくる人もいるだろう。そう、彼は、太平洋戦争開戦時に首相を務め、戦後、極東軍事裁判にかけられた東條英機元首相の曾孫なのだ。
「最初、『東條』と聞いて身構える方もいますが、軍刀を携えているわけでもないし、私は至って普通のオジさんです(笑)」
東條が全国各地を講演で回り、ポータルサイトで情報発信する理由は、意外にシンプルなものだ。
「“クールジャパン”がいい例で、日本のユニークな文化は海外では人気もあり評価されているのですが、肝心の日本人が『難しそう』と敬遠しがちで、思いのほか知らないことが多い。日本人である私たち自身が、日本のことをもっと知りたいと素直に思っても、これに応える仕組みや場所などの受け皿が慢性的に不足しており、当然、このままでは伝統文化は途絶えてしまいます……。全国津々浦々広く点在する神社は、日本人のルーツ。小難しいことはさておいて、そんな神社を知ってほしい。『神社(神道)って宗教でしょ』と距離を置く人もいますが、確かに便宜上は宗教法人に属するものの、はっきり言って全然宗教っぽくない(笑)。キリスト教やイスラム教のようにオンリーワンの神さまもおらず、布教活動さえない神道は、寛容で曖昧な日本人そのもの。パワースポット・ブームも手伝って神社に興味を持ってくれる人が多くなりましたが、理由は何でもいい。まずは楽しむことが大事なんです……」
実際、東條が手掛けた神社関連の書籍のなかには、「大人女子のわがままを叶えるご利益別ピンポイント神社!」など、かなりカジュアルな体裁のガイドブックまである。伊勢の式年遷宮がクライマックスを迎える直前にしたためたという新著『神社ツーリズム ~世界に誇る日本人のルーツを探る~』(扶桑社刊)をめくっても、新しい神社の楽しみ方が柔らかな語り口で綴られており、少々堅苦しい「東條」の姓と相反するギャップに、拍子抜けする人も多いのではないか。
「まぁ、本来の私のキャラには似つかわしくないですが(苦笑)、こうしたアプローチも私の役割だと思っているんです。“神社業界”って、伝統を守る立場だから、保守的で変化を極端に嫌う。見ず知らずの人間がきて、ポップなやり方で神社や神道を語ろうとすれば、『何だ、アイツは!』ってなってしまうわけです……。でも、私の場合、東條家の人間ということで、好意的な受け止め方をしてくれることが多い。日本のためなんですと説明すると、ある程度真意をわかってくれる(笑)」
神道を語れば、靖国問題を避けて通ることはできないだろう……。東條の曾祖父、東條英機元首相ら、いわゆる「A級戦犯」が合祀されていることで、近年、日本の閣僚が靖国に参拝すれば、半ば“自動的”に中国、韓国から批判の声が上がるという事態が続いている。
今年、8月15日に参拝を見送った安倍晋三首相が、秋の例大祭のある10月17~20日に、改めて参拝を断行するのか、その動向に注目が集まっている。 <文/週刊SPA!編集部>
※この続きは、週刊SPA!9月24日発売号と10月1日発売号の2号にわたり、上杉隆氏の連載「革命前夜のトリスタたち」にて 掲載されます
『神社ツーリズム』 神社を知ればニッポンが10倍楽しくなる! |
『週刊SPA!10/1号(9/24発売)』 表紙の人/暁美ほむら(魔法少女まどか☆マギカ) 電子雑誌版も発売中! 詳細・購入はこちらから ※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める! |
ハッシュタグ