更新日:2017年11月14日 14:33
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インターネットが雑誌に勝った日【コラムニスト・木村和久】

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その64 ―

 最近ドコモの雑誌見放題サービス「dマガジン」に加入して、驚きの安さにびっくりしつつも、作り手としては、こんなに安売りをしていいのかと、漠然とした不安を感じる今日この頃です。  というわけで「ネットが雑誌に勝った日」というコラムをお送りしますが、これはITバブル期と、現在のアベノミクス期の2つに分けます。 スマホ まずはITバブル期。それは中古車情報誌がネットへ移行していく過程の時期です。具体的な雑誌名を書くと差しさわりがあるので、一応Cということでって、なんかバレてるかな。  中古車情報誌は、全ページ広告みたいなもので、やたら分厚いのが特徴です。当然第3種郵便物認可なんか受けておらずって、つまり広告部分が、全体の50%以下じゃないと、認可が下りないんですよ。今や雑誌も宅配業者が安く運ぶので、そもそも第3種郵便物認可の意味がなくなりつつあるんですけど。  じゃその分厚い中古情報誌の原価って知ってますか? 10年以上前の話ですが、250円ぐらいで売ってる雑誌の原価が、おおよそ700~800円ぐらいと言われてます。つまり、原価割れしているんです。あの厚さの紙代とインク代を計算すると、それなりにお金がかかるんですな。それを、あり余る広告料で、カバーしていたというわけです。  中古車情報誌の広告はリアルなレスポンスを求められます。中古車を1ページに20台ぐらい掲載しますと、販売ノルマが1ページで2.5台と言われております。つまり1台も売れなかったらアウト、出稿停止ってことですね。  雑誌全盛の頃は、中古車情報誌も10万部を超えて、ウハウハ状態でした。ところが出版不況となり、部数が激減。しまいには3~4万部に落ち込みました。そうなると、1ページ2.5台を売るノルマなんて、夢の夢と思うでしょう。ところがネットサイトが頑張って、そこそこ販売できたのです。  中古車情報誌や住宅関連の情報って、実はネットで見た方が、いろんな情報をセグメントして検索できるから便利です。左ハンドルの外車って、チェックをいれただけで、すぐ必要情報が出て来ますからね。  そんなわけで、蔡倫が紙を発明して約2000年弱、グーテンベルグが活版印刷を発明して約600年、紙の印刷物が減少しているのですから、びっくり。誰がこの状態を予測できたでしょうか。こと情報誌においては、機能性、使いやすさ、価格など、全ての面でネット優位となりました。  そして現在、ドコモのdマガジンをはじめとした、スマホで雑誌見放題サービスが、恐ろしいスピードで拡散中です。約120雑誌を400円で読み放題ってありえないですよ。雑誌記事のコンテンツは、掲載時期を発売日からずらすのもありますが、だいたい全体の5~9割ぐらい見れますか。人気コラムや、著作権の関係で載せれない芸能人の写真などは、抜かれている場合もありましたが、でも1冊約3円で見れるって、恐ろしくないですか。私のコラムも見れました。1冊3円なら1ページ読むと、3銭ぐらいの手間賃ですか。まさに究極の薄利多売ですね。  実は雑誌によっては、こんなクソ安くても結構なお金になると喜んでいるケースもあるのです。でも、400円でこんだけ見れたら、個人的には雑誌を買わないですよ。しかも、雑誌屋が電子化するって言ってるけど、その手間が省けたじゃんね。携帯屋さんが、全て丸ごとやってくれてますから。
木村和久

木村和久

 個人的には、これで雑誌がますます売れなくなる予感がしてならない。しかも、コンテンツ制作者に恩恵がほとんどない。それが大問題ですね。 ■木村和久(きむらかずひさ)■ トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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