ばくち打ち
番外編その4:『IR推進法案』成立で考えること(18)
新規オープン後5年間ほどは、ジャンケット事業者を排除した形でも、澳門金沙(マカオ・サンズ)の開業時のように総投資を8か月間で全額回収する、などといったことは起こらないにしても、日本のカジノは充分以上の収益が見込める、とわたしは予測する。
国内だけで、その程度のギャンブル経済規模が、日本にはある。
なにしろ、パチンコ・パチスロ(良心的なホールで「控除率」8%)公営競走(「控除率」25%超)という、勝利するのは至難な極悪環境の中でも、日本は「世界一のギャンブル消費国」と言われているのである。
そこに平均控除率1%前後のゲーム賭博が、公明正大に登場する。
もう、勝負にならない。
永田町の法規制、霞が関の行政指導等で、結果的にさんざん痛めつけられてきた日本の賭博愛好者たちは、喜び勇んで合法カジノに通うようになるのだろう。
しかし、開業5年後にはどうなるのか?
一般フロアを埋めていた打ち手たちの資金は、おそらく枯渇する。
一回あたり5万円・10万円のバンクロールでは、とても勝ちを望めないのがゲーム賭博の世界である。
もう25年以上も反省することなく、相対的に貧しくなりつづけているこの国に、新しい世代の打ち手たちが突如大量に湧き出してくるとも思えない。
海外からの「ハイローラー」たちをどう取り込んでいけるか、がその時の日本のカジノの命運を決するのだろう。
日本に居住する「ハイローラー」たちのほとんどが、日本にある公認カジノで太い博奕(ばくち)を打つことは、まずあるまい。
なぜ日本にある公認カジノで太い博奕を打たないのか?
簡単な理由だ。
先進国に存在するほとんどすべての公認カジノでそうなのだが、自国民がおこなう一定金額以上のバイイン(=キャッシャーないしは勝負卓でチップを購入すること)について、ハウスは国税に報告しなければならない義務を負うからである。
資金洗浄(いわゆる「マネロン」)防止のため、という。
アメリカでは1万USD以上のバイイン、オーストラリアでは1万AUD以上のバイインといった具合に、それぞれ各国で報告の基準が決まっている。
この報告義務を意図的に怠れば、該当ハウスはライセンスを没収されてしまう。
じゃ、10万ドルのバンクロールなら、9000ドルのバイインを11回やれば国税に報告されないのか、というとこれがそうではない。「アイズ・イン・ザ・スカイ」と呼ばれるサヴェイランスのカメラで追われ、結局バレてしまうのだった。
大手ハウスのジャンケット・ルームとかプレミアム・フロアでの打ち手たちには、グレー・ゾーンの住人が多い件について、本稿(16)で説明した。
国税から「お尋ね」とか「お問い合わせ」の手紙が来ると困る人たちである場合も、きっと多いことだろう。
手紙だけならまだいいけれど、直接「税務調査」とか「査察」がかかってしまえば、エライことになる。
ウソをつけば刑事罰を適用される。
経験がある人にはわかるだろう。いったん税務調査か査察がかかってしまえば、たとえそれが「言い掛かりに近いもの」であったとしても、ほとんどの場合、国税のいい分どおりにむしり取られてしまう。
~カジノ語りの第一人者が、正しいカジノとの付き合い方を説く!~
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