第6章第4部:振り向けば、ジャンケット(2)

 5類はさらに、12種に区分される。

1. 政治の安全、特に政権の安全と制度の安全を脅かす、政治領域に浸透する黒悪勢力

2. “基層政権(区・郷・鎮・村の人民代表大会と人民政府)”の権力を握る、“基層換届選挙(区・郷・鎮・村の人民代表の改選選挙)”を操作して破壊する、農村資源を独占する、“集体資産(農村の共同資産)”を横領するなどする黒悪勢力

3. 家族や“宗族(一族)”の勢力を利用して農村でのさばって地方の覇を唱え、庶民を抑圧し痛めつける“村覇(村の顔役)”などの黒悪勢力

4. 土地収用、借地、立ち退き、事業案件の建設などの過程で、扇動や騒動を引き起こす黒悪勢力

5. 建築工事、交通運輸、鉱物資源、漁業などの業界や領域で、工事の独占、悪意の競争入札、不法占拠、乱開発・乱採掘を行う黒悪勢力

6. 市場、卸売り市場、駅や埠頭、観光地などの場所で、不正手段や暴力により商売を独占したり、強引に売り買いさせたり、みかじめ料を徴収したりする“市覇(市場の顔役)”や“業覇(業界の顔役)”などの黒悪勢力

7. “黄色・賭博・薬物(ポルノ・ギャンブル・薬物)”などの違法犯罪活動を行う黒悪勢力

8. 違法な高利貸付や暴力的取立を行う黒悪勢力

9. 民間の揉め事に介入し、闇の法執行を行う黒悪勢力

10. 中国国内へ入境して発展・浸透した“境外黒社会(国外・境界外の暴力団)”及び多国籍・境界越えの黒悪勢力

11. 乱脈なワクチン市場や砂利採取などの業界で活動し、合法的な生産経営を妨害し、正常な市場秩序を破壊する黒悪勢力

12. “信訪条例(陳情条例)”に違反して、陳情者が違法に上級機関へ直訴する、無理筋の陳情を行う、長期にわたり繰り返し陳情を行う、脅して財物をゆすり取るなどにより組織秩序や社会秩序を著しくかく乱するのを組織・画策・扇動する陰の組織者や指示者

(※日経ビジネスオンライン・『世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」』2018年3月9日号より)

 10の“境外”には国外のみならず、「一国二制度」で境界外に位置付けられる香港・マカオ、さらには中国が自国の1省としている台湾を含んでいる可能性が高い。台湾の暴力団「竹聯?」(ジュリェンパン)は名高い。

 と北村豊は加えて解説している。

「トラ退治とハエ駆除」が一段落して、やっとマカオの大手ハウスのVIPフロアに大口の打ち手が戻ってきたら、突然ともいえる中国共産党中央執行委員会と国務院からの「掃黒・除悪」通達だった。

 ここ数年、マカオの大手ハウスでは、一般フロアで客数および客単価の伸長が著しい。

 それゆえ、VIPフロアでの大幅な減収がおこっても、大手ハウスは経営的になんとか息がつけた。

 しかし、大口の顧客に「黒悪勢力」が多くを占める大手ジャンケット事業者は、そういうわけにはいかなかったのである。(つづく)

⇒続きはこちら 第6章第4部:振り向けば、ジャンケット(3)

PROFILE

森巣博
森巣博
1948年日本生まれ。雑誌編集者を経て、70年代よりロンドンのカジノでゲーム賭博を生業とする。自称「兼業作家」。『無境界の人』『越境者たち』『非国民』『二度と戻らぬ』『賭けるゆえに我あり』など、著書多数。