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ロシアとの平和条約交渉に前のめりの日本政府は、平和ボケだったウクライナそっくりだ
2019年01月15日
ロシアとの平和条約交渉に前のめりの日本政府は、平和ボケだったウクライナそっくりだ
グレンコ・アンドリー
<文/グレンコ・アンドリー『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』連載第15回>
日露平和条約交渉始まる
ロシアのラブロフ外相
日露平和条約交渉が1月14日から始まった。日本の河野太郎外相はロシアを訪問し、モスクワでロシアのラブロフ外相と会談したが、領土交渉について進展はなく、22日に安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談をモスクワで開催することを確認しただけに終わったといえるだろう。 ロシアとの平和条約締結には、北方領土問題が解決するかどうかによるが、それについては、
前回の記事
で述べたとおりである。
日本とウクライナ、双子のような政治事情
日本の言論空間において「平和」という概念が誤って解釈されている。とりわけ、平和主義を掲げている人達の主張する方針とは、非武装か、軽武装であるが、それらによって果たして平和を実現できるものなのか。また、非武装を唱えている人達の多くは心から平和を望んでそれを主張しているのか。以下、自分の祖国ウクライナの事例を取り上げながら、この問題について検討していきたい。実は、祖国と日本には看過できない共通点が存在しているのである。 さて、私が初めて日本に来たのは2010年9月で、ウクライナで戦争が勃発する4年前の頃だった。当時、日本の政治事情に関する知識はほとんど持ち合わせていなかったが、日本で生活し、日々舞い込んでくるニュースを目にしたり、日本人と接触する機会が増えるにつれ、自然とある事実に辿り着いた。それは即ち、日本の政治事情はウクライナの政治事情に似ている点が多いということである。 日本とウクライナは一見、まったく異なる世界に属しているように映るが、以下を見てほしい。日本にも思いあたるフシが多々あるのではないだろうか。
ウクライナの14の平和ボケ症状
①外国に押し付けられた歴史観、歴史認識と歴史教科書、そして第二次世界大戦の名称
ウクライナではなく、ロシアの観点から第二世界次大戦の出来事が評価される。ウクライナ民族運動やウクライナ蜂起軍の批判、過小評価。ウクライナの現実にまったく合わない「大祖国戦争」という名称が使われる。
②英雄達の犯罪者呼ばわり
ウクライナ蜂起軍は裏切り者呼ばわり、ナチスの手先呼ばわりされる。ソ連が起こした犯罪をウクライナ民族運動がやったなど歴史捏造を鵜呑みにさせられる。
③侵略者を解放者として扱う
侵略軍である赤軍は解放軍という評価をされる。赤軍に入っていたウクライナ人だけに勲章や名誉を与えて、ウクライナ蜂起軍経験者が無視される。
④自国と敵対するような振る舞いをする国を姉妹国、最も大事な相手などと呼ぶこと
常に傲慢な態度で内政干渉し、外交政策にも口出しをするロシアだが、ウクライナの権力者や知識人または国民の多くは、ロシアを姉妹国、友好国、切れない関係にある大事な相手などと呼んでいる。
⑤住んでいる国を憎んでいるのに、中々祖国に帰ってくれない異民族の存在
ウクライナ国内に住んでいて、ウクライナを罵倒したり、蔑んだりするロシア人。いくら、「嫌なら帰って下さい」と言っても帰らない。それどころか常にウクライナに対して理不尽な要求を出す。ロシア語の公用化、ロシア語教育充実、歴史認識を合わせること、自治権など。普段傲慢で攻撃的なのに、法的な措置を取ろうとすると、人権侵害だと騒ぎ、弱者を装う。
⑥いたるところでの反国家勢力、売国勢力の蔓延
政界、行政機関、軍隊、警察、保安庁、報道機関などで、ロシアに好意を抱き、意図的にロシアに都合のいいようにウクライナの国益を損ねている人間や組織が存在する。
⑦外国工作員の活動を防止せず、スパイ天国であること
国家機関にロシアの工作員が潜り込んでいるが、スパイ防止活動は行われていない。ロシアの工作員は捕まる恐れもなく、自由にウクライナ国内で破壊活動ができる。
⑧非核三原則発表
ウクライナは非核三原則を発表して自ら核兵器の放棄を宣言した。その後、実際に全てを放棄した。
⑨愛国者をファシスト、ナチとレッテル貼り
独自の歴史認識や、独立した国益に沿った外交。内政を主張すると、ファシスト、ナチ、極右、過激派などと呼ばれる。
⑩国防意識皆無で、軍隊不要説蔓延(いわゆる平和ボケ)
とんでもない規模の軍縮が行われ、その軍縮に疑問を抱かなかった人がほとんど。これからは平和な時代で戦争が起こるはずがない、そもそも戦う敵がないという考えが蔓延していた。また、軍隊は不要で軍事費も金の無駄遣いという言説があった。
⑪外国指導者の気まぐれに媚びた外交
大事なことを決める時、必ずロシアの顔色を伺ったり、相談したりする。ロシアの要求を鵜呑みにする。指導者の就任後初の外遊先はロシアであるという屈辱的な習慣。
⑫情報戦が下手で、外国のプロパガンダで悪者にされることの多さ
膨大な予算を使って堂々とプロパガンダや捏造を宣伝しまくるロシアの報道機関に対して、誰も傷つかないようにできるだけ中立で控えめのウクライナの報道。
⑬国家予算を使って、自国の生活様式を格好よく見せるテレビドラマを大量に創出する隣国
ロシアの生活を格好よく、豊かに見せているテレビドラマが多い。話の中で皆が大きなきれいな家に住んでいる。実際のロシアではそんなわけがないのに。またロシアの軍人や警察官、あるいは諜報員を格好よく、英雄のように見せる映画やドラマも多い。そのドラマや映画はウクライナで放映され、ウクライナ人はロシアが豊かで格好いいと勘違いする。
⑭露骨に国益を外国に貢いでいる売国政権の経験
極悪の売国奴であるヤヌコビッチ元大統領(2010~2014年)が国家破壊活動を行い、ウクライナをロシアに売り渡そうとした。
ロシアに侵略されて初めて平和ボケを自覚
いかがであろうか。以上、ウクライナの特徴を簡潔に述べたが、日本人のみなさんは、心当たりはあるのではないかと思っている。程度や詳細、歴史背景の差はあるかもしれないが、以上のような事象は日本には存在しないと言えるだろうか。日本の現状を素直に直視すれば言えないと思われる。逆に、「そんな事情が日本にはない!」と言い切れる方は、おめでたいと言わざるを得ない。ある意味、羨ましいのだが(笑)。 言っておきたいが、今述べた日本とウクライナの共通点は、主に2014年までのウクライナを指している。2014年以降、ロシアがウクライナを攻撃した後、これらの事象は次第に改善されるようになった。しかし、それまでにこのようなことが正にウクライナの現状であり、常識でもあった。 そして、長年このような状況にあったウクライナは、攻撃されて、戦争に引きずり込まれた。このような事象があったからこそ、戦争が起きてしまったことも紛れもない事実だ。つまり、先述した事象は元の条件であり、戦争はその結果である。
日本はウクライナのようにならないと言い切れるか
そこで、私は問いたい。ウクライナと似ている諸条件を持つ日本が、同じ結果に遭わないという保証はどこにあるのだろうか。私はウクライナと似ている点の多い日本は、結果としてウクライナと同じく、戦争という最悪な状況になってしまうのではないかと、非常に心配している。 また、似ているような条件にあったウクライナであるからこそ、日本に大いに参考にもなると私は考えている。だが、日本の参考になる情報は多々あるのにも関わらず、ウクライナについて報道する日本のメディアはまったくその情報に焦点を当てない。 日本で、ウクライナに関する報道はそもそも少ないが、その少ない情報の中でも断片的な事実しか報道されずに、そもそも、「何が起きているのか」「それはどういう意味で、どういう意義を持っているのか」、そして、「なぜそのような悲惨な状況になってしまったのか」というようなことを、日本の報道を見るだけでは理解できないだろう。 本連載の目的の一つは、日本におけるウクライナに関する情報の欠如を少しでも改善することである。そのためにも以下、ウクライナはなぜ攻撃され、なぜ苦しめられているのか、またそのような羽目にならないために、つまり平和を守るために、日本はどうすればいいのか、次回以降、検討していきたい。
【グレンコ・アンドリー】
1987年ウクライナ・キエフ生まれ。2010~11年、早稲田大学へ語学留学で初来日。2013年より京都大学へ留学、修士課程修了。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程で本居宣長について研究中。京都在住。2016年、アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門で「ウクライナ情勢から日本が学ぶべきこと――真の平和を築くために何が重要なのか」で優秀賞受賞。月刊情報誌
『明日への選択 平成30年10月号』
(日本政策研究センター)に「日本人に考えてほしいウクライナの悲劇」が掲載。
グレンコ・アンドリー
1987年ウクライナ・キエフ生まれ。2010~11年、早稲田大学へ語学留学で初来日。2013年より京都大学へ留学、修士課程修了。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程で本居宣長について研究中。京都在住。2016年、アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門で「ウクライナ情勢から日本が学ぶべきこと――真の平和を築くために何が重要なのか」で優秀賞受賞。月刊情報誌
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いかがであろうか。以上、ウクライナの特徴を簡潔に述べたが、日本人のみなさんは、心当たりはあるのではないかと思っている。程度や詳細、歴史背景の差はあるかもしれないが、以上のような事象は日本には存在しないと言えるだろうか。日本の現状を素直に直視すれば言えないと思われる。逆に、「そんな事情が日本にはない!」と言い切れる方は、おめでたいと言わざるを得ない。ある意味、羨ましいのだが(笑)。 言っておきたいが、今述べた日本とウクライナの共通点は、主に2014年までのウクライナを指している。2014年以降、ロシアがウクライナを攻撃した後、これらの事象は次第に改善されるようになった。しかし、それまでにこのようなことが正にウクライナの現状であり、常識でもあった。 そして、長年このような状況にあったウクライナは、攻撃されて、戦争に引きずり込まれた。このような事象があったからこそ、戦争が起きてしまったことも紛れもない事実だ。つまり、先述した事象は元の条件であり、戦争はその結果である。日本はウクライナのようにならないと言い切れるか
そこで、私は問いたい。ウクライナと似ている諸条件を持つ日本が、同じ結果に遭わないという保証はどこにあるのだろうか。私はウクライナと似ている点の多い日本は、結果としてウクライナと同じく、戦争という最悪な状況になってしまうのではないかと、非常に心配している。 また、似ているような条件にあったウクライナであるからこそ、日本に大いに参考にもなると私は考えている。だが、日本の参考になる情報は多々あるのにも関わらず、ウクライナについて報道する日本のメディアはまったくその情報に焦点を当てない。 日本で、ウクライナに関する報道はそもそも少ないが、その少ない情報の中でも断片的な事実しか報道されずに、そもそも、「何が起きているのか」「それはどういう意味で、どういう意義を持っているのか」、そして、「なぜそのような悲惨な状況になってしまったのか」というようなことを、日本の報道を見るだけでは理解できないだろう。 本連載の目的の一つは、日本におけるウクライナに関する情報の欠如を少しでも改善することである。そのためにも以下、ウクライナはなぜ攻撃され、なぜ苦しめられているのか、またそのような羽目にならないために、つまり平和を守るために、日本はどうすればいいのか、次回以降、検討していきたい。 【グレンコ・アンドリー】 1987年ウクライナ・キエフ生まれ。2010~11年、早稲田大学へ語学留学で初来日。2013年より京都大学へ留学、修士課程修了。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程で本居宣長について研究中。京都在住。2016年、アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門で「ウクライナ情勢から日本が学ぶべきこと――真の平和を築くために何が重要なのか」で優秀賞受賞。月刊情報誌 『明日への選択 平成30年10月号』(日本政策研究センター)に「日本人に考えてほしいウクライナの悲劇」が掲載。このままでは日本はウクライナの二の舞になる! ロシアの侵略を招いたウクライナの教訓
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