松井秀喜はマイナーに残るのか? 実績ある大物ほど移籍が決まらない現実
NANO編集部>
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なでしこジャパンがロンドン五輪の初戦で勝利した直後、松井秀喜の戦力外通告のニュースは、一昨日のイチローのヤンキース移籍ほどの大きなインパクトはなく、事実だけが淡々と広まった。
10年ひと昔、とはよく言ったものだ。
10年前といえば2003年。
大阪には、近鉄バファローズというパ・リーグの老舗球団があり、北の大地・北海道から、甲子園の優勝校が出現するなど儚き夢と思われ、海を渡った3年目のイチローは、黒々とした短髪で連日ヒットを量産していた。
澤穂希はアメリカ女子プロリーグのピッチを走りまわり、川澄奈穂美や宮間あやは、どこにでもいる女子高生で、今やすっかりお馴染みとなったNYの2チームによるメジャー・リーグの交流戦、サブウェイ・シリーズでは、読売ジャイアンツからFA宣言した松井秀喜が、「日本の4番」という大きな看板と共に、MLBの名門ニューヨーク・ヤンキースに移籍し、少し前からアメリカで活躍していたメッツ新庄との日本人対決に、日本中の注目が集まった。
歴史は、繰り返すとも言う。
松井秀喜が入団したヤンキースとの「サブウェイ・シリーズ・デイ・ナイト・ダブルヘッダー」の1試合目にスタメン出場し、ヒットを放った新庄剛志。しかし、ヤンキー・スタジアムに場所を移して行われた第2試合目のクラブハウスに、新庄のユニフォームはなかった。
他の選手を昇格させるため、25人のメジャー枠から外された新庄は、ペナントレースが後半戦に差し掛かる真夏のど真ん中に、3Aに降格されたのだ。ほどなく新庄は、メジャー各球団が優先的に保護できる40人枠からも外され、言ってみれば、今回の松井秀喜と同じく「2階級降格」の憂き目に遭ったのだ。
◆大物ほど移籍が決まらない現実
振り返ると今年(’11年秋から’12年春にかけて)のストーブリーグは、過去に例を見ないほど低調な動きだった。大物FA選手の移籍が、ほとんど決まらない。ビッグパーツがフレームに収まらない。それゆえ付随するスモールパーツ(脇役選手)のキャストも決まらず、誰に人気が集まったかといえば、斎藤隆(今季はダイヤモンドバックス)のように比較的安価(1年2~3億円)な年俸と、確実に短いイニングを任せられるリリーバーや若手先発、はたまた守備のスペシャリスト達らが次々と新しい契約を更新していた。
ひとえにこれは、MLBが設けた戦力均衡の為の超課金制度の弊害であり、ビッククラブと呼ばれるヤンキース、レッドソックス、ドジャース、メッツら各球団は、年俸総額の高騰を恐れるあまり、大物・主力クラス移籍決定の決断を鈍らせた。
結果、松井秀喜やジョニー・デーモンのような実績ある大物選手の契約は開幕後に後回しされ、昨年8億円以上の年俸で活躍したホワン・ピエール(盗塁王の常連、俊足巧打の左打ち外野手)のように今季の年俸が前年のおよそ10分の1という、とんでもない価格破壊を招いた。
一度冷や飯を喰わされると、二度目のスポットライトへの障壁は果てしなく遠ざかるメジャーリーグの夢舞台。
松井秀喜は、果たして、マイナーに残るのか。
プレイオフ進出を狙うドジャースあたりに買い叩かれるのか。
はたまた電撃日本球界復帰か。
しばらくの間、メジャーリーグの選手移籍から目が離せない。
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