川崎フロンターレの“苦労人”橋本晃司を直撃【Jリーグ開幕直前インタビュー】
いよいよJリーグの開幕まで一週間を切った。今シーズンからは久方ぶりの2シーズン制が導入されることとなり、昨年までとはまた違ったシーズンになることは間違いないだろう。
週刊SPA!では、プロ野球のキャンプ取材とともにいくつかのJリーグのキャンプも取材をしてきた。2月の沖縄と言えば、どうしてもプロ野球に目が行ってしまうのだが、実はこの時期、沖縄は様々なスポーツのチームがキャンプや合宿を行っている。野球と同じくプロリーグであるJリーグのクラブも数多くキャンプに訪れている。地元記者に聞いた。
「野球にばかり目が行きがちですが、Jリーグのクラブも数多く沖縄でキャンプを行っています。クラブの数がJ1だけでなく、J2やJ3も含めるとけっこうな数になるのでキャンプが行える場所は限られます。そのため、野球とは異なり入れ替わり立ち替わりでいろんなクラブが合宿に訪れます」
先週までは横浜、今週からは札幌……というように、入れ替わり立ち替わりでやってくるJリーグのクラブは実に16チーム。数だけではプロ野球の倍以上である。だが、沖縄にはJ3のFC琉球はあるものの、サッカー人気はいかがなものだろうか?
「代表クラスや人気の選手がいるクラブはけっこうな賑わいですよ。沖縄県民は沖縄出身者がいるチームを応援する傾向にあります。だから沖縄出身の選手がいるクラブには大勢地元の人が詰めかけます」
那覇市出身で、代表にも招集された田口泰士が所属する名古屋グランパスも今年から南風原町でキャンプを行っているのだが、人気は上々だとか。
「大久保選手や中村憲剛選手のいる川崎フロンターレとの練習試合には、5000人もの人が集まり場内は超満員でした。地元出身の田口選手を取材するテレビ局も来て、かなりの盛り上がりでしたね」
盛り上がっているのはプロ野球ばかりではないということだ。そこで記者も川崎フロンターレ、名古屋グランパスのキャンプを取材した。
この日、川崎フロンターレは地元のFC琉球(J3)との練習試合を行っていた。レナト、大久保、小林悠などJリーグ屈指の前線の動きを間近に見て、思わず感嘆の声が漏れてしまった。観客席も平日の午後ながらも地元のFC琉球を応援する子供たちや、大久保、中村憲剛ら目当ての一般客など1000人ほどが見守った。
練習試合は格の違いを見せつけた川崎フロンターレが勝利したのだが、相手のFC琉球は前日に名古屋グランパスとも練習試合を行い、3日連続の練習試合にもかかわらず強豪チーム相手に食らいついていく姿勢には、思わず胸が熱くなった。試合後、ボランチとしてキレのあるパスや動きをしていた川崎フロンターレの1人の選手に話を聞いた。橋本晃司……知る人ぞ知る、苦労の人である。
インタビューの前に橋本晃司について紹介しておこう。彼は2009年、明治大学から名古屋グランパスに入団した。前年から名古屋グランパスの強化指定としてチームにも帯同しており、将来を嘱望された若手の1人だった。石川県の星陵高校時代はあの本田圭佑と同期、そして明治大学では長友佑都と同期、2年上には先に名古屋入りした小川佳純がいた。ビッグネームの名前の陰に隠れてしまいそうだが、中盤からボールをキープして前線に斬り込み、鋭いシュートが打てる新人として期待が掛かったのだが、入団した時期が悪かった。時はストイコビッチ政権優勝前夜。ケネディ、玉田……といった強烈なFW陣の名前に隠れ、いつしか橋本晃司の名前は消えていった。
そんな橋本は2012年にJ2の水戸ホーリーホックへ移籍する。この移籍により才能が一気に開花。2013年はリーグ戦で13点を取り、翌2014年には大宮アルディージャに移籍してJ1の舞台に返り咲いた。ただ、思うようなプレーはできず大宮もJ2降格の憂き目に遭ってしまう。そして、契約満了により退団し川崎フロンターレへ入団したのだ。
――川崎という強豪チームに移籍して、キャンプも終盤です。慣れましたか?
橋本「今日はボランチで出て、監督からはボール持ったら前に顔出してと言われてます。アシストもしたいし、シュートも打ちたいので、隙があればしっかりシュートを打ってゴールを決めたいと。頭では理解できてるんだけど、まだまだかなって」
――川崎の前線は元々、小林悠選手や大久保嘉人選手、レナト選手といった強力な面々がいたのに加え杉本健勇選手も加入。J1屈指のFW陣がいます。前線にボールは出しやすいですか?
橋本「もちろんです。素晴らしい選手が多いので、出しやすいですね。パスを出せば出すだけ決めてくれるような期待感がありますね。僕もミドルレンジからでもチャンスがあれば狙っていきたいです」
――J2水戸で大ブレイクして大宮へ移籍となったのですが、残念ながら降格となってしまいました。
橋本「チームも最後まで調子が上がらなかったし、難しいシーズンでしたね。でも、勉強になることはいっぱいあったと」
――昨年はJ1でも初得点しました。昨年あげた2点のうち、1点は名古屋からでした。名古屋に在籍されていた頃、川崎は苦手な相手だったと思います。やはり今年の対戦でも古巣の名古屋は意識しますか?
橋本「う~ん、意識しないというか……でも、やっぱりアウェイ(名古屋)に行ったら意識するでしょうね。点は取りたいです」
――今年の目標は?
橋本「まずは試合に出れるように、チームの約束事をしっかり理解したり自分自身のレベルアップを測って、このチームに必要とされる選手になることでしょうね。そして試合に出たらアシストを出したり、シュートを打ったりして得点に絡みたいですね」
中村憲剛を始め、中盤も選手層の厚いフロンターレ。その分厚い層に苦労人の橋本が食い込んでいけば更に分厚い選手層を形成することができるはず。これまでの苦労を強豪川崎フロンターレで一気に開花させることができれば、フロンターレ悲願の優勝もグッと近づくはずだ。間もなく開幕するJリーグだが、今年はどんなドラマが待っているのだろうか。
取材・文/SPA!沖縄キャンプ取材班
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