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東日本最古・最大級の巨大古墳がつぶされる…。静岡県沼津市の道路建設計画

 景観・歴史・文化・環境・生態系などの破壊に目をつぶり、ひっそりと進行している開発計画は数多い。それは本当に必要な事業なのか? 地元住民はどれだけ情報を与えられているのか? 全国各地で進められている、“あまり知られていない”開発計画の現状をリポートした!!  静岡県沼津市の巨大古墳が、道路建設で削られようとしているという。
高尾山古墳

高尾山古墳近影。地元では「神社の下に古墳がある」と古くから語り伝えられてきたという(写真/秋野宣治)

 この「高尾山(たかおさん)古墳」の実像が明らかになったのはつい最近、’08年のこと。沼津市中心部と東名沼津IC・国道246号方面を結ぶ都市計画道路「沼津南一色線」の建設のため、その計画線上にあった2つの神社が隣接地に移転となった。すると、その下から巨大な前方後方墳が出現したのだ。しかもこの古墳、考古学的には非常に重要なものだという。静岡大学の篠原和大教授はこう解説する。 「高尾山古墳は、東日本最古・最大級の古墳です。築造は230年頃、埋葬は250年頃と推定されています。邪馬台国の女王・卑弥呼の墓と言われる前方後円墳・箸墓古墳(奈良県桜井市)よりも前に、東海地方でこれだけ巨大な前方後方墳が造られていたというのは、非常に重要な発見です」  高尾山古墳は全長62.178m、周囲に幅8~9mの周溝が巡らされ、周溝の底から墳頂までは4.679m。これは古墳出現期としては全国でも屈指の規模だという。それだけの勢力を持った王がこの地域に存在したということになる。 「最初のスルガの王の墓と言ってもよい。卑弥呼と戦った狗奴(くな)国の王・卑弥弓呼(ひみここ)の墓だとする説もあります」(篠原教授) ◆「調査」と言いながら古墳を削り取る沼津市  しかし沼津市は、この重要な古墳を壊して道路を建設する方針だ。沼津市は’16年度末までに高尾山の「発掘調査」を行い、’17年度から古墳跡地の道路建設工事に着手するという。つまり、「調査」とはいえ古墳は削り取られるのだ。  沼津市議会は6月の定例会最終本会議で、高尾山古墳の調査費5100万円が盛り込まれた予算案を可決した。議会での反対もあり、閉会後に栗原裕康市長は「調査に入る時期はしばらく保留し、文化庁・国交省・県・学識経験者らを交えた協議会を設け、その意見を参考にしながら今後の方針を決める」と表明したものの予断は許さない。「高尾山古墳を守る市民の会」代表の杉山治孝さんはこう語る。 「これだけの重要な古墳があるというのは地域の誇り。教育上も大事です。昨今は“古墳ブーム”とも言われていますし、観光資源にもなり得ます。でも沼津市民にはその価値がほとんど知られていない。私たちは、道路が必要ないと言っているのではないんです。迂回ルートをつくるなど、古墳を保存する方法を検討してほしい」 ※7/7発売の週刊SPA!では、「こっそり進む[ニッポンの風景]破壊計画ワースト10」という特集を掲載中。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
週刊SPA!7/14号(7/7発売)

表紙の人/トリンドル玲奈

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