お金を貸したいのはどっちの男?――連続投資小説「おかねのかみさま」
学「なるほどな。そうだろう。じゃあ1ヶ月貸して3万円だったらどうだ」
マ「…んー、んー、そうねぇ。ちょっと考えるけど、健太くん…かなぁ…」
村「おい!!!」
マ「だって…しかたないじゃない。それだけ困ってるってことだし、もしうまく返ってきたらまたそのお金でウチのお店で飲んでくれたらいいわけだし、あたしが全部もらおうってわけじゃないのよ。あたしはいつもみんなの幸せを願ってるからこそ、大事なお客さんの大事なひとを助けてあげたいの」
学「さすが商売人だ。じゃあ最後の質問。AさんとBさん、全く会ったことがないふたりの人がいたとする。どっちに1万円を貸す?」
マ「まったく知らないひと?」
学「そうだ。まったく知らない人だ。そのかわり、その人がいままでに誰からいつどれくらいのお金を借りて、どんなふうに返してきたかはわかる」
マ「あら。だったらそれを見たらいいじゃない」
健「ウンウン」
学「Aさんは毎回きっちり返してくれる。いままでいろんな人から100回お金を借りて、100回ともしっかり返してきた。そんなAさんに1万円を貸すと、1ヶ月で10,100円になって返ってくる」
マ「はい」
学「その一方、Bさんはいままで100回中10回お金を返せずにいる。金額は毎回同じだが、支払の期限に間に合わなかったのが10回だ」
マ「いやぁよ。そんな人に貸したくない」
村「そうだ。やめとけ。ロクな奴じゃない」
健「ウンウン」
学「そう思うだろ。だけど、Bさんに1万円を貸すと、1ヶ月で12,000円返ってくるとしたらどうだ?」
健「うーーーーーーーーーーーーーーん」
マ「ちょっと1ヶ月はこわいわねー」
村「そうだそうだ」
学「よろしい。じゃあ10分貸すだけで11,000円になるとしたら?」
マ「貸すわね」
村「貸す」
健「じゃ、じゃあ僕も!!!」
学「そういうことだ。結局どんなに危ない相手でも、具体的にリスクが比較可能になれば、あとは金利の問題でいくらでも世の中から金があつまるんだ。たとえ100回中90回しか約束の守れない人間でも、世の中には『それくらいの遊び』ならしたがっている人間が腐るほど居るもんだ」
健「すごい!!!」
村「すごいんだよこいつは。ポルシェに眉毛描かなけりゃ」
マ「でもさ、でもよ、10分だけお金借りても意味ないんじゃないの? 借りる立場の人って、お金使いたかったりおいしいご飯食べたかったりするからお金借りるんでしょ?」
学「良い質問だ。まるでネタ合わせをしたかのような良い質問だ」
健「そうですよ。10分で使い切ることはできるけど、パチンコだってそんな短時間に増やすことなんかできませんよ」
学「お前はだまっとれ」
健「すいません」
マ「結局借りてくれる人がいないんだったら、なんていうの? 机上の空論っていうんじゃないの?」
学「いまの日本ではな。だけどな。世界中のカジノ、あるいはネット上のカジノでアツくなってる人間について考えてみろ」
健「かじの?」
マ「あ」
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