「疑われてるみたいで気分が悪いよ」――46歳のバツイチおじさんはデート中に怒りをあらわにした〈第22話〉
翌日は19時からエラとのデート。約束の日だ。
念には念を入れてこの日もビーナスに英語を習い、能力が少しだけ高まったところでエラとのデート、という運びで進んだ。
待ち合わせ場所は彼女の働くお店の前。エラは休日にもかかわらず、待ち合わせ場所にお店を選んだ。それだけ、お店が生活の一部だということなのか?
お店はビーナスのマンションから結構近い場所にある。授業が終わり、バイクタクシーで待ち合わせ場所へ向かった。
少し早く着いたのでカウンターでカンボジア産のアンカービールを飲んでいると、ほどなくしてエラが現れた。
エラ「待たせてごめん。早くから待ってるって友達に聞いたわ」
俺「いいよ。俺、早く着いちゃったし。行く?」
エラ「うん」
休日のエラのファッションはアメカジスタイルで黒い長袖のTシャツに白っぽいミニスカートだ。
「お店にいるときより可愛い!」
いよいよエラとの休日デートだ。お店を出ようとすると、カウンターにいるエラの同僚の女の子たち数名が「ヒュー!」と応援を送った。
外に出て俺がトゥクトゥクを拾おうとすると、エラがそれを制した。
エラ「この間のトゥクトゥクドライバーにお願いして、待って貰ってるの。今日は1日、彼を貸し切るけどいいよね?」
俺「うん、大丈夫だよ」
そう言い、トゥクトゥクに乗り込んだ。
俺「行きたいお店、決めた?」
エラ「うん。中華レストランで行きたい場所があるの。いい? 中華で?」
俺「うん」
トゥクトゥクで10分ほど走ると、地元の人しかいない中華レストランに到着した。観光客用の中華レストランほど高級店ではないが、地元の人が行くのに少し奮発するぐらいのお店だろう。
俺「好きなもの頼んでいいよ!」
そう言うと、エラは海鮮スープに牛肉と玉ねぎとキノコを甘辛く煮た回鍋肉、空芯菜炒めを選んだ。俺は奮発して赤ワインを頼んだ。お店のスタッフは、赤ワインがオーダーされると、メニューに載ってるにもかかわらず大慌てし始めた。値段は一本15$(1500円)くらいなのだが滅多に出ないようだ。店員3人で「どうやってコルクを開けるのか?」と真剣に話し合っている。その慌てぶりがあまりにも面白かったので、エラを見るとエラもニヤニヤしていた。目が合うと、2人でくすりと笑った。
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