雑学

「るりちゃんに触ってみたい」――46歳のバツイチおじさんはさらに大きな邪念を抱き“もうひとりの俺”と話し合った【第41話】

46歳のバツイチおじさんによるノンフィクション巨編「世界一周花嫁探しの旅」、今回の滞在地も7か国目インドです。ヨガの総本山・アシュラムを無事に卒業し、るりちゃんとの二人旅を満喫していたバツイチおじさん。当然ながら、バツイチおじさんのるりちゃんに対する恋心がどんどん膨らんでいきます。果たしてこの恋は成就するのか? いつもの寅さん展開か、奇跡の逆転劇か? 南インドを舞台に繰り広げた「恋のアシュラム」編もついに最終章、結末まで少々長いですが最後までお付き合いください!

「この子を連れて帰るなら、俺たち全員分のお金をお前が払えよ」――46歳のバツイチおじさんはアラブの荒くれ者に難癖をつけられた英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」【第41話 最後の5日間】

南インドにある「シヴァナンダ・ヨガ・アシュラム」で一緒に修行したるりちゃん。彼女と共にインドの最南端にあるヒンデゥー教の聖地カンニャクマリを旅することに。アラビア海、インド洋、そしてべンガル湾と言う三つの海が交わる神聖な場所で朝の御来光を見ていた時、彼女の自然な笑顔の素敵さを再認識し、完全に恋に落ちた自分に気づく。だがそこで、お気に入りのカメラが壊れたことをきっかけに、不自然に人を観察し、連載を書きながら旅をする自分自身の卑しさにも気づいた。ヒンデゥー教の聖地で『世界一周花嫁探しの旅』する自分自身に対し自己嫌悪するのであった――。

御来光を見た帰り道、るりちゃんから提案があった。

るり「ごっつさん、そろそろコバラムビーチに移動しません? 私、インドに滞在できるの、あと5日しかないんです。少しビーチでのんびりしたいです」

そう、るりちゃんと旅ができるのは、あと5日しかない。

俺「うん。そうだね。じゃあ、とっとと荷物まとめるか!」

地球の歩き方によると、コバラムビーチは南インドの中でバルカラビーチに匹敵するほどの美しいビーチらしい。二人は朝食のチキンビリヤーニを食べた後、素早く荷物をまとめ、40度の猛暑のなか、1キロほど歩いてローカルバスの停留所へ向かった。

南インドのバナナの葉っぱを模倣したお皿に盛られたチキンビリヤーニ

俺「ここから2~3時間ぐらいみたいだね」

相変わらずのインド時間でバスの到着は30分ほど遅れたが、なんとかぼろぼろの古いローカルバスに乗り込んだ。

カンニャクマリのローカルバスステーション

るりちゃんとは隣り合わせの席に座った。

俺「るりちゃん、今朝も早起きだったし疲れたでしょう。眠っていいよ。俺が起こしてあげる」

激しい揺れのバスの中、隣に座るるりちゃん

もしるりちゃんが眠ったらそっと俺の肩を貸してあげよう。
もし、眠ったらね。
いや、むしろ眠らないかな?
このひどいバスの揺れだと、なかなか寝付けないか。
でも、バスの揺れがちょうど心地良くなるかもしれない。
もしるりちゃんが眠ったら確実に俺に寄りかかってくるシチュエーションだ。
むふふ。
すると、脳内iTunesからシューベルトの子守歌が流れてきた。

ねむれ~♪
ねむれ~♪
母の胸~に~♪
ねむれ~♪
ねむれ~♪
るりちゃんねむれ~♪


るり「ごっつさん、起きてください。もうトリヴァントラムの駅に到着しますよ」
俺「…え?」

ガタガタと道に揺られて3時間。
どうやら俺のほうが眠ってしまっていたようだ。
安すぎるコントのような展開だ。

トリヴァントラムの駅に降りると駅前に群がるリキャシャとコバラムビーチまで行くための交渉をした。どのリキシャもかなりの金額をふっかけてくる。

トリヴァントラム駅。多くのリキシャがたむろする

俺「コバラムビーチまで、200ルピーでいい?」
リキシャ「いいよ。乗りな」

二人で重い荷物を積み込みリキシャに乗り込んだ。

俺「じゃあ、コバラムビーチまでよろしく。200ルピーで良いんだよね?」
リキシャ「いいよ」

リキシャが走って1分経った。

リキシャ「コバラムビーチまでは500ルピーだ」
俺「は? 乗る時に200って言ったよね?」
リキシャ「言ってない」
俺「言ったよ。確かに200ルピーって」
リキシャ「……(無視)」
俺「おい! ふざけんなよ!」


かなり頭にきた。態度もふてぶてしくて、完全に舐めているように感じた。
偉そうな態度も気に食わない。

俺「おい、そのまま警察に向かってくれ。お前を訴える」
リキシャ「はは(笑)。ここはインドだぞ。警察が取り合うはずないだろ」
俺「おい、お前。殴るぞ、こら」

するとるりちゃんが俺を制しに入った。

るり「ごっつさん、もう降りましょうよ。この運転手さん、人柄も悪いし、これ以上一緒にいたくないです」
俺「……ごめん。熱くなった。そうだね。でも、こいつ本当にムカつくから懲らしめたい」
るり「……」
俺「おい! お前、リキシャ止めろ。いますぐここで降りる」
リキシャ「オッケー500ルピー」
俺「は? なめんなよ。1分しか走ってねーだろう」
リキシャ「お前が勝手に降りるって言ったんだろう?」
俺「いいから、一旦下ろせ!」
リキシャ「500」
俺「ふざけるな。リキシャ止めろよ!」

するとドライバーは道の脇でリキシャを止めた。そして、誰かと話し始めた。

るり「あの人、警察じゃないですか?」
警察「おい、お前ら一旦リキシャから降りろ」
俺「はーー? 違うんです。騙したのはこいつなんです」

俺とるりちゃんはリキシャから降り、荷物を担ぎ出した。

警察「オイ、お前ら、彼が『ここまで運んだのにお金を払わない』って言ってるぞ」
俺「いや、違うんです。初め200ルピーでコバラムビーチまで行くって言ったのに、乗ったら500払えっていうんです」
警察「でも、乗って運んでもらったんだろう?」
俺「ほんの1分です。交渉が決裂して、今すぐ降ろしてくれと言ったんです」

リキシャドライバーのほうに目をやると、ニヤニヤしながら煙草を吸っている。

「あの野郎! ぶん殴りたい!」

警察「それでもここまで運んできたんだからお金を払いなさい」
俺「いや、それはおかしいでしょう!」

俺はしばらく警察と押し問答した。でも、警察は一向に俺の意見を聞いてくれない。どうやら、このドライバーとグルのようだ。きっとこのパターンで何人もの観光客からお金を巻き上げているに違いない。しばらくすると、俺たちの周りに多くの人が集まってきて人だかりができた。

るり「ごっつさん、お金払ってこの場から離れましょう」
俺「いや、あいつムカつくから何とかしたい」
るり「ね、早く払って行きましょう」

珍しくるりちゃんの表情から優しい笑顔が消えていた。
ハッとした。
リキシャのドライバーの悪態に腹を立てすぎ我を忘れてしまっていた。

俺「……そうだね。そうしよう」

それから警察と交渉し値段を下げさせ200ルピーだけ払うと、リキシャのドライバーはそれを受け取った。そして、ニヤニヤとしながらその場から去っていった。
改めてるりちゃんの顔を見た。少しだけ俺に引いているように見えた。

「やっちまったな~」

それでもまだ、はらわたは煮えくり返っていた。
その時、きちんとした身なりの50代ぐらいの男性が話しかけてきた。

男「大丈夫だったかい? 災難だったね」
俺「そうなんです。なんか騙されたっぽくて」
男「警察と少し話しをしたけど、どうやら言葉の行き違いだと言ってたよ」

確かに俺の英語は中学生レベルだ。

俺「うーん。ちゃんと伝えたはずなんですけど」
男「まぁ、しょうがないよ。で、どこに行きたいんだい?」
俺「コバラムビーチです」
男「コバラムか。だったらバスに乗ればいい。バスだったら騙すことはないし、バス停もすぐ近くだ」

そう言うと、彼はバス停まで案内してくれ、俺たちをバスに乗せると運転手と話をし、行き先に着いたら俺たちに教えてくれるように話をしてくれた。

男「なんか困ったことがあったら、ここに連絡して」

男は名刺を差し出した。

男「インドを嫌いにならないでね」
俺「はい」
るり「本当にありがとうございました」

本当に優しい人だった。
コバラムビーチに向かうバスの中で、るりちゃんがこんなことを言った。

るり「インド人って騙す人もいっぱいいるけど、最後は必ず誰かが助けてくれるんですよね」
俺「確かに。バンガロールで殴られた時も、最後はみんなが助けてくれた」
るり「でしょう。だから、インド大好きなんです」


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コバラムビーチに到着すると、二人で泊まる宿を探した。

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