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【茶葉名産地でセシウム検出】生産者の苦悩とは?

【茶葉の名産地でセシウム検出】 2011年5月に神奈川県の南足柄茶で570Bq/kgという暫定基準値(500Bq/kg)超えのセシウムが検出されて以来、6月には静岡県の本山茶(679Bq/kg)、埼玉県の狭山茶などでも暫定基準値超えが続出。そのため、日本茶の消費量が原発事故後に激減した。特に狭山茶はセシウム濃度が高く、消費者の買い控えが進み廃業に追い込まれる業者も続出した ◆原発事故後の向かい風に負けず、日本の茶事業復活に繋げたい 福島原発事故の影響で「お茶からセシウム検出」という報道が話題になった。特に大打撃を受けたのは、日本茶の三大産地に数えられ、埼玉県西部で生産されている「狭山茶」だ。 この地域では茶葉から暫定基準値の500Bq/kgどころか、1000~3000Bq/kgといったセシウムが続々と検出されている。そこで、狭山茶を生産する業者を直撃した。 「2011年は売り上げが例年の3割まで落ち込んでしまった。同業者では、1割まで減ったところもある」と語るのは、埼玉県入間市で狭山茶を生産しているAさん。 「ウチも当面の資金繰りに困っているけれど、農地を担保には借金ができない。でも、この仕事は先祖代々受け継いできたもの。土地を売ってでも何とか続けようと思っています。従業員の給与は30%が未払い、パートさんの休みも増やしたがもう限界。人を減らすしか方法がない」と語る。 地元の老舗である町田屋、橋本園といった業者も、この逆風に耐えきれず店をたたんだ。入間市内でこだわりのお茶づくりをしてきたBさんはこう語る。 「’99年のダイオキシン騒動のときにも大打撃を受けました。そのときに3~4割売り上げが落ち込んだんですが、結局回復はしませんでした。いったん離れたお客さんは戻ってきてくれないのです。評判が落ちるのは簡単だが、それを回復するのは相当にたいへんなことだということを、そのときに実感しました。大手スーパーが最近、『放射能ゼロ宣言』をしましたが、これは力の強い立場だからできること。一気に返品された業者はどんどん苦しくなっていく」
本杉光雄市議

自慢の茶畑で茶の説明を続ける本杉市議。浜岡原発(上)が近くにあることも相まって、茶葉の売れ行きが激減。9月26日には本杉市議が中心となり浜岡原発の「永久停止」を決議した

筆者は静岡茶の名産地である牧之原市へと向かった。同市は茶工場が203もあり、茶葉の生産額85億円で全国1位(’07年)。2600haの茶畑が広がる。市内で茶葉を生産する本杉光雄市議はこう語る。 「静岡県内ではそれほど高いセシウム濃度は検出されていませんが、『静岡県でも暫定基準値超え』の報道が出た後、売り上げは激減しました。在庫をひっぱり出して、『昨年のお茶だから安心です』と言って売らなければならない状態。静岡だけでなく、全国的にお茶の買い控えが広がっているようです」 牧之原市内で製茶業を営むCさんは「5人中2~3人は九州産のお茶をくれと言う」と悩んでいる。
「検査済み」シール

埼玉県では安全をアピールするため、放射能基準値以下の「検査済み」シールを配布。茶業者のCさんは「埼玉県や入間市はよくやってくれている」と語る。検査費用は自治体、または業者自らが負担している

「我々製茶業者は、独自で検査機関に出しています。ウチの茶葉はだいたい100~200Bq/kg程度。暫定基準値内ではありますが、これをそのまま開示してしまえばほとんどの人が買ってくれない。放射能を気にする人は、ND(検出限界値未満)でなければ買ってくれないのです。検出限界値ができるだけ高い、精度の低い検査をすればよかった」 主食であるコメの暫定基準値500Bq/kgと一緒というのでは、あまりに茶葉に厳しすぎるのではないだろうか? 茶葉をそのまま食べることはあまりない。抹茶として利用するなどの場合もあるが、コメのように毎日何百グラムも食べるわけではない。茶葉の段階ではなく、お茶として飲む段階で考えれば、それほどセシウム摂取量は多くないのだ。 (図参照⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=121523) ⇒『日本のお茶文化に朗報あり!! 来年、お茶の放射能濃度は低くなる』に続く https://nikkan-spa.jp/112702 セシウム摂取量取材・文/北村土龍 撮影/田中裕司
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