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東大卒の25歳男性が農業に可能性を感じたワケ。「いつまで経っても低い“農家の収入”を打開したい」

 インスタグラムで流れてきた動画に思わず目を奪われる。「東京大学を卒業して農家を継ぎました」――そんな自己紹介のあと、青年は「米利休と申します」と頭を下げた。端正な顔立ちは意外と農作業の風景に映えるものだな、と思った。  25歳、大学を卒業して間もない青年が農業従事者の平均年齢約68歳(農水省)と言われる時代に農業に捧げると決意した経緯はなにか。明晰な頭脳からはじき出された勝機と、計算ではない奥底に眠る情熱に触れる。
米利休

米利休さん

東大工学部から農業の道へ

――東京大学を卒業されたとのことですが、農業を学んでいたのでしょうか。 米利休:東大では工学部マテリアル工学科という学科に所属し、学んでいました。そもそも中学を卒業してからすぐ、高等専門学校へ進学をしてエンジニアリングを勉強していたんです。工学系の勉強をすれば、将来人の役に立てると思っての選択です。そこから、20歳のときに東京大学へ編入しました。ずっと工学畑なので、農業は学んでいません。ただ、ずっと身近ではありました。というのは、今年77歳になる祖父がひとりで農業をやっていたからです。ご存知の通り、農業は非常に厳しい労働環境であり、しかも収入も多くありません。

“割に合わない仕事”にあえて参入することで…

――廃業も選択肢の1つとして十分あり得ると思うのですが、あえて継承したのはなぜでしょうか。 米利休:私の父は農業を継がず、サラリーマンをしています。私以上に間近で農業の厳しさをみてきた父にとって、それは熟慮の末の結論だと思いますし、尊重されるべきだと私も思います。ただ、家族会議がおこなわれて、「もう廃業しよう」という方向へ傾きかけたとき、私は「祖父以前から脈々と受け継がれてきた農業をここで辞めてしまうのは、もったいない」と感じたんです。  経営の視点に経てば、厳しいことは私でも理解できます。農業にはさまざまな機械が必要であり、ある程度の期間で買い替える必要もあります。それらは力作業を軽減してくれる代わりに高額です。どんどん若い働き手がいなくなっていることからも、農業が“割に合わない仕事”だとみなされていることは明らかです。しかし私は、そこに参入することによって、新しいビジネスチャンスを開拓できるのではないかと思ったんです。
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自身が培ったノウハウを農業でも実践したい
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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