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福島農家の「放射能低減」への努力と苦悩

もう一つの三春祭り

「もう一つの三春祭り」。秋にも三春町で地元農家と交流する収穫祭を行うという

 福島の農家は放射能を減らす努力を続けてきている。しかし、消費者との溝はまだまだ大きい。我々はどのように福島の農家とつきあっていけばよいのだろうか? 原発事故以降、福島県内で支援活動を行っている日本国際ボランティアセンター(JVC)の谷山代表理事に聞いた。

「JVCでは原発事故以降、毎年多大な被害を受けた田村郡三春町の農家と交流する場所を持ってきました。三春町では毎年春に『三春滝桜祭り』というお祭りを開いています。けれど、2011年は震災のため開くことができませんでした。政府の指示で作付けも禁止です。放射能の実害以前に農家たちの心が折れそうになっていました。何とか彼らを元気づけられないだろうかと、私たち県外の消費者や生産者が現地の農家と交流する『もう一つの三春滝桜祭り』を開いたのです」

 農産物の出荷規制・風評被害が広がるなか、参加者たちは悩み、苦しみ、批判も含めて、顔をつきあわせて大いに話し合った。

「県外からの参加者の中には、『福島の農作物は危険だと思う』とハッキリ言う人もいました。けれど、きちんと福島の農家の話を聞いた上での意見です。双方が包み隠さず話すことが大事です。三春町はいち早く放射能測定器を導入し、国の基準(100ベクレル/kg)よりはるかに低い20ベクレル/kgという基準を町で設定しました。しかし、それは簡単なことではありません。測ることは大事だということはみなわかっていますが、自分の作物を測るのは非常に怖い。作物が売れなくなるということも怖いのですが、何よりも恐れているのは周りに迷惑をかけること。一つでも20ベクレル/kgを超えてしまえば、『三春町の食べ物は危険だ』と町自体にレッテルを貼られてしまう。その苦しみを知ってほしい。

 桜祭りに参加した、“放射能ゼロ野菜”を売りにしている千葉の農家が言いました。『私たちの取り組みが、あなたたちを苦しめることになっていたなんて……』と。

 農薬、添加物、大気汚染、電磁波など、現代社会には数え切れないほど多様なリスクがあります。人はそれらをどこまで許容できるか、避けるかの選択を繰り返しながら生きています。ところが原発事故以降は放射能だけが突出してしまい、1ベクレルですら許容できないという状況になっている。

『故郷の農業を何とか復活させたい』という福島の農家の努力を知らずに、『そこにいる人間はけしからん』『福島のものは食べるな』などと言う人もいます。それは福島の農家との繋がりがないからこそ言える言葉でしょう。

 対話のないところで一方的に相手を攻撃するのは、暴力以外の何物でもない。健康についての不安も、安全な食べ物を求める気持ちもみな一緒。行って初めてわかることもたくさんあります。まずは、お互いが繋がることが大事です」

谷山博史

谷山博史・JVC代表理事

 JVCでは、今秋にも三春町の地元農家と交流する「収穫祭」を行うという。

 福島の農作物を食べるか食べないかは自由だ。しかし、『危ない』というイメージだけで福島産を避けるのは、苦境にある農家を追い込んでしまうことになる。まずは福島産の農産物がどのように作られ、どのようにチェックされて売られているのかを「知ること」から始めてみてはどうだろうか?

 8月6日発売の週刊SPA!特集「福島の農産物は基準値を大幅に下回っている!」では、放射能低減の努力や研究を重ね、実際に国の決めた基準値よりも大幅に低い測定値を設定している農家を直撃。彼らの努力と苦悩の現実をリポートしている。 <取材・文/白川徹 宮田敬子 北村土龍(本誌)>

●日本国際ボランティアセンター(JVC)http://www.ngo-jvc.net

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