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ホーガンの“引退ドラマ”にウォリアー出現――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第125回

 ホーガンがトレードマークのイエローのタンクトップをひきちぎった。ホーガンとジャスティスがリングのまんなかで手四つの体勢で組み合った。力くらべでは若いジャスティスにやや分があった。ショルダーブロックのぶつかり合いでもジャスティスがホーガンを吹っ飛ばした。そんなひとつひとつのシーンが“ホーガン物語”の名場面集になっていた。  ジャスティスがパワーボムでホーガンの巨体をキャンバスにたたきつけた。ジャスティスがカバーに入ると、ホーガンがカウント2でこれをハネのけた。ホーガンはハルク・アップと呼ばれる定番のポージングで試合の流れをいっきに変え、そのまま3パンチ、ビッグブーツ、ロープの反動を利してのレッグドロップの必勝フルコースへとつないだ。  ホーガンがフォールの体勢に入ると、レフェリーのアール・ヘブナーがすかさずキャンバスを2回、たたいた。ジャスティスのマネジャーのハービー・ウィップルマンがカウント2.99のタイミングでリング内に飛び込んできた。ヘブナーの右手が3つめのカウントを数えたようにみえた瞬間、こんどはジャスティスがおもむろに右肩をあげた。レフェリーは“カウント2”をコールした。  ホーガンはこのとき、あからさまに不快な表情を浮かべた。レフェリーはウィップルマンの乱入を反則とみなし、試合終了のゴングを要請した。それから数秒後、こんどは新顔のパパ・シャンゴ(のちのゴッドファーザー)が乱入してきて、ジャスティスとふたりがかりでホーガンに集中攻撃を加えた。  聞きおぼえのある入場テーマ曲がスタジアム内に響きわたり、アルティメット・ウォリアーが入場ランプを全力疾走してきた。ジャスティスとシャンゴはあっというまに退散し、ホーガンとウォリアーはリング上で握手を交わした。ホーガンの“引退ドラマ”は、いつのまにかウォリアーの復帰ドラマに姿を変えていた。
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もうひとつのビッグ・サプライズ
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