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赤毛ヤリマンとの切ない恋の話――爪切男のタクシー×ハンター【第八話】

 数週間後、深夜の休憩時間、円山町のラブホテル街へと続く上り坂を、職場のベランダからタバコを吸いながらぼんやり眺めていると、泥酔して立ってることもままならなくなった赤毛ちゃんが、B-BOY風の男二人に両手を引っ張られ、坂道をズルズルと引き摺られながらホテルに入っていく姿を目撃した。その姿は西部劇の映画で処刑されるガンマンの姿に見えた。私のプレゼントした銃を持った赤毛の女ガンマンは処刑されてしまったのだ。以上が私の切ない恋の話である。 「運転手さん、こんな話ですけど大丈夫ですか?」 「はい? ああ……う~ん? なんと言いますか……」 「甘酸っぱい恋の話じゃなかったですよね。すいません」 「確かにちょっと私が求めてたのとは違いますね(笑)」 「本当にすいません」 「いえいえ……」 「……」 「お客さん……自分の気持ちだけを押し付けて逃げちゃったんですね」 「そうですね……しかもエアガンを使ってごまかしちゃいました」 「それはよくないですよ、彼女、無理して笑ってたと思いますよ」 「おっしゃる通りですね……」 「エアガンも彼女の心もどっちも粗末に扱ってます。相手の気持ちをもっと考えてください」 「はい……」 「お客さんは、彼女さんと赤毛さんのどっちが好きなんですか?」 「……」 「それならお客さんが銃が似合うと思う女はどっちですか?」 「……赤毛ちゃんです」 「答えは出たんじゃないですか? 二人の女で悩んだら銃の似合う女を選びましょう」 「……そうですね」  赤毛がラブホテルに連れ込まれる姿を目撃した日から、私は赤毛に対して距離を置いて接するようになっていた。それは自分の大切な物が汚された嫌な気分になったからだった。倦怠期を超えた倦怠期のような状態で、もう身体を重ねようという意識すらなくなっていた同棲中の彼女をむやみに求めたのも、赤毛へのやりきれない気持ちをごまかすためだった。とっくの昔に答えは出ていたのだ。赤毛にも彼女にもひどいことをした。
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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