更新日:2017年11月15日 18:02
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在韓邦人に「警告」を発した駐韓日本大使館の切迫度とは?【評論家・江崎道朗】

北朝鮮による空襲、化学兵器攻撃に対してどうしたらいいのか

在韓邦人に「警告」を発した駐韓日本大使館の切迫度とは?【評論家・江崎道朗】 この「安全マニュアル」では、韓国政府の危機管理マニュアル「国民行動要領」を邦訳し紹介している。朝鮮戦争で国土が戦場になった韓国では、空襲や化学兵器攻撃、テロなどが仕掛けられた際にどのように身を守るのか、具体的なマニュアルを整備し、定期的に住民訓練を実施している。  例えば、北朝鮮軍が攻撃を仕掛けてきて、「空襲警報」が鳴った時は次のように動くことが求められている。 《国民の皆さんは地下シェルターやランドマークを利用して、迅速かつ秩序ある避難をしてください。  劇場、運動場、ターミナル、デパートなど人が多く集まる場所では、営業を停止し、客を避難させてください。  走行中の自動車は、近くの空き地や道路の右側に停車して乗客を安全な場所に避難させてください。避難の際には化学兵器の攻撃に備えて防毒マスクなどの保護装備及び代替利用可能な装備を着用して 避難してください。  すべての行政機関では、非常勤務態勢を整えて、独自の警戒を強化してください。  民防衛隊長、地図要員、交通警察官は住民の避難誘導と車両走行統制に取り組んでください。  避難場所では、秩序を守り、継続して放送を聞きながら、国民安全処の指示に従ってください》  韓国では、「民間防衛」体制が整備されており、各地域に「民間防衛隊長」がいる。日本と違って戦争を前提にした住民組織が作られているわけだ。  また、化学兵器の攻撃が仕掛けられた際の「国民行動要領」には、こう記されている。 《化学兵器検出時、汚染予想時又は攻撃確認時、避難施設や屋内に避難した場合、室内に外気が入らないよう密閉してください。  屋外では風が吹く方向を判断して、風が吹く左右方向や壁の高いところに避難し呼吸器と皮膚を保護してください。  劇場、運動場、ターミナル、デパートなど人が多く集まる場所では、営業を停止し、客にハンカチなどで呼吸器を保護させた後、避難させてください》  もしものとき、こうした韓国政府の情報を知らなかったでは済まされない。そして旅行者は、防毒マスクなど持っているわけがないのだが、いざというとき、どうしたらいいのだろうか。  韓国を訪問する日本人には今後、韓国政府自身がこうした注意を呼び掛けていることを周知すべきだろう。
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危機対応マニュアルの存在を国民に伝えないマスコミ
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

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