更新日:2017年11月15日 18:02
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在韓邦人に「警告」を発した駐韓日本大使館の切迫度とは?【評論家・江崎道朗】

危機対応マニュアルの存在を国民に伝えないマスコミ

 これまで日本政府は、現行憲法前文にあるように《平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと》考えてきており、緊急事態対応を怠る傾向が強かった。  しかし、備えあれば憂いなし。  阪神淡路大震災や東日本大震災などの相次ぐ大規模災害を受けて「想定外」を考え、事前に準備しておくことが犠牲者を少なくすることになるという「常識」が定着してきた。  この「常識」を踏まえ、たた駐韓日本大使館としても朝鮮半島で紛争が起こるかも知れないことを前提に「安全マニュアル」を公表し、在韓邦人たちに「危機管理」を呼びかけたのだ。  ところが日本のマスコミは、こうした国民の安全に直結する情報を伝えようとしない。  しかも、5月9日に当選した文在寅大統領は、「親日派」排除を公約に掲げて当選した筋金入りの反日派だ。有事に際して在韓邦人の帰還に協力してくれるとは限らない。  そこで6月2日、自民党の安全保障調査会(会長・今津寛衆院議員)は、朝鮮半島有事を想定した邦人保護に関する政府への提言をまとめた。その提言のなかで、韓国の在留邦人を迅速に退避させるため、航空会社などとの連携を強化するほか、ソウルの日本大使館が発行する「安全マニュアル」の周知徹底を図るよう求めたという(6月2日付時事通信)。  在韓邦人と、これから韓国を訪問する日本人の生命・安全が大事だと思うならば、マスコミは「報道しない自由」を行使しないでもらいたい。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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