「ウイスキーはストレートで飲む」は正しい? ビジネスマンのための一目おかれる酒知識
最近はやりのハイボールについては、さかのぼると1950年代にトリスバーなどで飲まれた「トリハイ」によって広まったようです。ハイボールは外国にもあり、諸説ありますが、開拓時代のアメリカで生まれた飲み方だという説が有力です。いずれにせよ、現在のハイボールブームは、第2次ブームといってもいいでしょう。
最近はどこの酒場へ行ってもハイボールがあるので、ビールが飲めないときにとても便利です。ビールというのは不思議な飲み物で、体調が悪いときはまったく飲めませんし、美味しくありません。かえってウイスキーやスピリッツなどの強い酒のほうが飲めます。そういう意味では、ビールは体調のバロメーターといえるかもしれません。
最後に水割りについてお話しましょう。今は海外でもスコッチ&ウオーターとか、ウイスキー&ウオーターといって飲む人もいますが、もともとは日本独自の文化だと思います。日本酒のアルコール度数が16度前後だったことから、日本人の味覚には水で薄めたウイスキーが合っていたのです。
水割り文化がさらに広まったのは、サントリーが1970年代に行った「二本箸作戦」の効果です。これは寿司屋や割烹、居酒屋から蕎麦屋にいたるまで、二本の箸で食事をする和食店にもウイスキーを置いてもらおうという、一大キャンペーンでした。
このとき「ウイスキーの水割りは和食に合いますよ」とさかんに営業したことが功を奏して、「ウイスキーは和食には合わない」という既成観念はなくなりました。ビーフジャーキーかナッツくらいしかウイスキーのつまみにしない外国人は、目を丸くして驚くでしょう。
ちなみに私はサントリーのウイスキーは、ストレートで飲んでも、薄い水割りにしても、味が崩れないよう設計されているとにらんでいます。これはストレートだけに照準を合わせるより難しい技術で、日本の誇れる職人芸ではないでしょうか。
【江口まゆみ】
神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター
1
2
『ビジネスパーソンのための一目おかれる酒選び』 「きみ、メニューから何か適当にたのんどいて」と言われて困っているビジネスパーソンのため、お酒を愛する酒呑みが書いた、酒呑みのためのとびきり実践的なお酒の入門書。 |
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ