「ウイスキーはストレートで飲む」は正しい? ビジネスマンのための一目おかれる酒知識
~ビジネスマンのための一目おかれる酒知識 第7回ウイスキー編その1~
ビジネスマンであれば、酒好きでなくても接待や会食で酒に親しむ機会は多いです。そして多くの人は「それなりに酒に詳しい」と思っているはず。しかし、生半可な知識、思い込みや勘違いは危険。飲み会の席で得意げに披露した知識が間違っていたら、評価はガタ落ちです。酒をビジネスマンのたしなみとして正しく楽しむために「なんとなく知っているけどモヤモヤしていた」疑問を、世界中の酒を飲み歩いた「酔っぱライター」江口まゆみがわかりやすく解説します。
ススキノにこんなバーがあると聞きました。
そこには店主が世界中から集めてきた、珍しいヴィンテージものやボトラーズもののウイスキーがコレクションしてあり、チューリップ型のテイスティンググラスにうっすらと注がれたストレートのウイスキーを、舐めるように味わうのだそうです。
舐めるくらいの量でも1杯平均5000円くらいしますが、ここがぼったくりバーでない証拠に、医師や弁護士や社長といったセレブな紳士で、いつも満員状態だそうです。そして「やはりラフロイグの赤ラベルはいいね」などという会話があちこちで交わされているというのです(赤ラベルとは、1970年代に製造され、ラベルに赤く「15」と書かれているあのボトルです)。
この店のように、舐めるようにストレートを飲むのが、本物のウイスキー通なのでしょうか?
実際、スコットランドで何も言わずにウイスキーを注文すると、ストレートで出てくるそうです。そして水も出てくるのですが、それはウイスキーを加水するための水で、チェイサーではないそうです。イギリス人にはチェイサーという言葉はなく、これはアメリカから入ってきた言葉、用途ではないかといわれています。
ウイスキーマニアの主催するテイスティング会へ行ったことがありますが、ここでも飲み方はストレート。チェイサーの水はあるのですが、40度以上のアルコール度数に喉が焼けてきて、だんだん飲み疲れてきます。これはウイスキーの試飲会でもよくあることで、「なんでオンザロックか水割りで飲ませないんだ~!」と発狂しそうになります。
こんなとき私がよくやるのは、チェイサーの水とウイスキーを1対1で割ること。これをトワイスアップといい、由緒正しいウイスキーの飲み方です。ウイスキーの仕込み水や産地の水で割ると、より美味しいといわれています。
一日に数百種類のテイスティングをこなすウイスキーのブレンダーは、トワイスアップにして原酒のテイスティングをするそうです。そのほうが、ウイスキーの香りや味の細部まで確認できるからです。
試しに同じウイスキーを、ストレートとトワイスアップで飲み比べてみてください。ストレートではわからなかったそのウイスキーの個性が、トワイスアップにすると花開くように感じられることでしょう。
では、オンザロックはどうでしょうか。私は氷がだんだん溶けて、ウイスキーの味が変化していく過程が楽しいので、オンザロックもよく飲みます。たいていの場合、時間の経過とともにウイスキーの角が取れ、甘くなっていくような感じがします。そして飲み頃の濃さになったら、薄まる前に飲んでしまいます。そんなふうに、ウイスキーとの対話を楽しめるのがオンザロックだと思っています。
日本バーテンダー協会の会長になられた岸久さんは、著書の中でページをさいて氷の重要さについて語っています。
バーではオンザロックに入っている丸い氷や、ジンフィズなどに入れる四角い氷などのほかに、シェーカーに入れる氷、ステアに使う氷、チェイサーに入れる氷など、大小様々な氷が必要で、氷屋さんから運び込まれた氷の塊からそれらを切り出すのに、4~5時間もかけるというのです。
仕入れる氷にも目を光らせていて、スが入ったりスジが見える部分ではなく、ピシッときれいにクリスタル状に固まった、氷の芯の部分を使うようにしているそうです。ここを岸さんは、寿司ネタのように「氷のトロ」と呼んでいます。
オンザロックに使う氷は、多面体に切り出した「ブリリアント氷」に加えて、丸い氷や、ザックリ切り出した四角い氷などを、グラスや飲み物の種類に合わせて使い分けているといいます。バーへ行ったら、ぜひオンザロックの氷にも注目していただきたいですね。
ウイスキーはストレートで飲むべきか?

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