甲類焼酎は「不味い安酒」という誤解 ペットボトルだって美味い
~ビジネスマンのための一目おかれる酒知識 第10回焼酎編その1~
ビジネスマンであれば、酒好きでなくても接待や会食で酒に親しむ機会は多いです。そして多くの人は「それなりに酒に詳しい」と思っているはず。しかし、生半可な知識、思い込みや勘違いは危険。飲み会の席で得意げに披露した知識が間違っていたら、評価はガタ落ちです。酒をビジネスマンのたしなみとして正しく楽しむために「なんとなく知っているけどモヤモヤしていた」疑問を、世界中の酒を飲み歩いた「酔っぱライター」江口まゆみがわかりやすく解説します
量販店で見かける大容量のペットボトルに入った透明な酒。しかも4リットルで2000~3000円と激安です。
「こんな酒は科学的にアルコールを薄めただけのまがい物に違いない」
と思っていませんか?
この酒が焼酎の甲類ということは、ご存じですよね。
焼酎には甲類と乙類があり、連続式蒸留機で蒸溜した焼酎を甲類、単式蒸留機で蒸溜した焼酎を乙類といいます。甲類と乙類は、2006年に呼び名が変わり、甲類は連続式蒸留焼酎、乙類は単式蒸留焼酎となりましたが、甲類と乙類の名称も併用されているので、ここでは馴染みのある甲と乙を使うことにします。
乙類焼酎は、原始的な単式蒸留機で蒸溜するので、原料の芋や麦の香味がしっかり出ていて、個性的なのが特徴です。
一方、甲類焼酎の原料は、糖蜜や、サトウキビ、トウモロコシ、麦、米などです。糖蜜の場合は、酵母を加えて発酵させ、そのもろみを連続式蒸留機でアルコール度数97%ギリギリまで蒸溜し、36%未満まで下げて商品にします。アルコールと水以外の不純物はすべて取り除かれるので、甲類焼酎はアルコールの甘みと香りのするピュアな味になります。
以前グレーンウイスキーの回で説明したように、イギリスでカフェ式の連続蒸留機が発明されたのは1830年のことでした。では日本に連続式蒸留機が入ってきたのはいつのことでしょうか。それは1895年(明治28年)頃だそうです。
そして明治43年には、愛媛県宇和島の日本酒精という会社が、干し芋を原料にして、連続式蒸留機で蒸溜した日本で最初の甲類焼酎を発売しました。これは「ハイカラ焼酎」と呼ばれ、品質が良く安価なため、大人気となったのです。
乙類焼酎の品質が上がり飲みやすくなったため、焼酎ブームが起きたのは2003~2004年。それ以前の乙類焼酎は飲みにくかったとすると、明治末頃の乙類焼酎は、かなり個性が強く、香りや味にもクセがあったのではないかと思われます。そこへピュアで飲みやすいアルコールが発売されたのですから、大評判になるのもわかります。
戦後すぐの1948年頃から、甲類焼酎をビール風飲料で割って飲む飲み方が生まれ、ビールの代用品として親しまれました。ホッピーの誕生もこの頃で、当時はホッピー以外にもビール風飲料がたくさんあったのですが、最も大衆に支持されたホッピーだけが、現在まで生き残っているというわけです。
ホッピーを割る甲類焼酎は、キンミヤ焼酎が最も合うといわれていますが、それは味がまろやかで口当たりが良いからだとされています。また、ホッピーが流行った戦後の焼け跡で飲まれていたのが、キンミヤ焼酎だったからだという説もあります。
焼酎の甲類は質の悪い酒?

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