エンタメ

ある女性アーティストの奮闘を通じて「男女の差」とは何かを考えてみた<カリスマ男の娘・大島薫>

一人の女性がアーティストを目指すということ

 吉田佳寿美(アーティスト名:Kathmi)さんは24歳、福岡生まれの女性アーティストだ。普段はご自身が設立されたCG制作会社EMOGRA.incでグラフィッカーとして活躍されている。 kathmiさん イラストレーターはわかるとして、グラフィッカーとはどういう職業なのだろうか。 「解釈はいろいろわかれるとは思いますね。イラストレーターはもともと企業やクライアント側から企画が決まったうえでオファーを受けて制作に取りかかると思うんですけど、グラフィッカーはもっと前段階というか、企画の段階から間に入って商品の制作をやっていくっていうイメージでしょうか。あくまで、私の解釈ですけど……」  つまりは、業者ではなく、プロデューサーやアドバイザーのような立場でもあるということだろうか。それはなかなか大変そうだ。同じような職業や働き方を選んでいる女性は多いのだろうか? 「あまり見たことがないですね。私はもともとストリートの文脈が強くて、ウォールアートとかそういうところから絵に携わっていったんですけど、同じような活動や職業を選んでいる女性は地元では正直見たことなかったですね。東京に出て少し出会ったくらいで……」  自分の選んだ職業としては満足されてますか? 「そうですね。自分でも楽しんでできることをお仕事にさせてもらっていると思いますし、他人から喜ばれることが多いのもやりがいを感じます」  そんななか、アーティストとしても力試しというか……どうしてこの大会に出ようと思ったのでしょうか? 「自分は福岡の出身なんですけど、特にそういった地方の地域での男女の考えの差って大きくて。地元に残ってる人でいえば細々としたお仕事を続けて、専業主婦になって……っていうような姿をよく見てきました。それが私にはとても生きづらそうに見えたんですよね」  基本的にこういった話は九州地方で顕著に思う。厚生労働省「平成22年賃金構造基本統計調査」によると、男女間の賃金格差については佐賀を除く都道府県で九州は平均よりも高いという結果だった。加えて出生率に関しては熊本が3位以内に入るなど、いまだに「女性は結婚して家庭に入るもの」という文化が根強いエリアだという姿が見える。 「そういった人たちとは逆になろう、逆になろうとしていたら、気付いたらこのLIMITSの大会に出ていたって感じですね(笑)」  男女比率を見てみると、九州のなかでは福岡が第3位でおよそ県民の半分以上が女性だ。もちろんこれは地方から東京に出たりした人は除外しているデータなので、ある意味では女性が外部に出ていかない県ともいえる。それだけにkathmiさんの「女性1人で福岡を出る」という決断が、いかほどの想いかというのは伝わってくることだろう。  多くの男性アーティストに交じって自分の力で勝負する姿というのは、そんなkathmiさんの決意そのものなのかもしれない。 作品

さて、kathmiさんの試合結果は?

 そんな男女差と向き合ってきたkathmiさんが今回の第1回戦を争うテーマは奇しくも「男女」「違い」というものだった。  対戦相手のHirofumi Mochizukiさんは、甲冑のような無骨な鎧武者の男性と対峙する、拳銃に艶めかしいキャットスーツのような服を身に纏った女性を描いた。  対して、kathmiさんが描いたのは何者かに襲われる男女2人の共闘を描いた作品で、剣を片手に敵に立ち向かう男性と盾でサポートする女性を描写することで、男女の違いとした。  点差は100点近く差を付けてkathmiさんの勝利だったが、自身での出来栄えはどうだったのだろうか。 「いやぁ……ちょっと苦手なテーマでしたね(苦笑)」  苦手なテーマ? 「絵を描くうえで、大多数の人たちがパッと見て、わかるように描こうとするんですよね。でも、そうすると、一番多くの人が共感するのはたぶん女性が守りの役割で、男性は攻撃の役割っていう……その世間一般のイメージを自分自身理解しているだけに、少し葛藤してしまったっていうか……」  つまり、実際はそうではない、と。 「そうですね。今の女性って結構強いじゃないですか。もしかしたら女性が刀を持って戦うのかもしれないし、男性のほうが実は守りに適してるんじゃないかとか……考え始めたらキリがなくなっちゃって、だから制限時間20分の内結構下書きに使う時間が多くなっちゃいましたね」  本当に伝わることとは何なのかというのは難しい。多数が理解することに合わせて発信することが、本当に多くの人の心を打つのかという疑問は、ボク自身何度も感じたことがある。 作品
次のページ right-delta
女装をしている自分に感じるジレンマ
1
2
3
★大島薫への相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。⇒投稿フォーム(https://nikkan-spa.jp/inquiry
※題名には「大島薫への相談」と記載してください。なお、いただいたエピソードは、日刊SPA!にて採用させていただくことがございます。ご了承ください

大島薫写真集 大島薫に例のアレを着せてみた

男の娘、大島薫の写真集発売!

おすすめ記事