更新日:2022年11月20日 10:40
エンタメ

ある女性アーティストの奮闘を通じて「男女の差」とは何かを考えてみた<カリスマ男の娘・大島薫>

女装をしている自分に感じるジレンマ

 自分の話になって申し訳ないが、ボクは常々「誰がどんなものを着たっていい。誰を好きになるのかも自由だ」と繰り返し発言しているが、たまにそんなボク自身が究極の男女二元論者なのではないかと自分を疑うことがある。  例えば、女装というのは男性と女性という存在があったうえで成立する言葉だ。この世界の男性がスカートを履き、女性が髪の毛を短くするのなら、スカートを履いたところで女装とは言わない。つまり、女装とはそれが女性性の記号であると認知されているものを身に纏う必要があるわけだ。  そういう意味では男性でありながら女性に見せる女装というものにボク自身がこだわりすぎると、自由な格好をすればいいという自身の発言に、自ら矛盾するということを常に自覚しなければならない。  しかし、その考えを伝えるために、女性のように見える男性という今のボクの姿は非常にわかりやすい。これはまさしく伝えるということに関するジレンマだ。 作品 Kathmiさんは、わかりやすければいいというものには懐疑的だ。 「ただテーマに沿った絵を描けばそれでいいってことじゃなくて、その出されたテーマに対して自分なりの解釈を加えて見ている人に渡すまでがLIMITSだと思っているので、ちょっと今回は消化不良でした」  とはいえ、勝利は勝利だ。今回のポイントで現状ではkathmiさんが2位に躍り出ており、このまま勝ち抜けば優勝も夢ではない。  これから先、LIMITSでも、社会でも戦い続けるkathmiさんの今の心境はどのようなものなのだろうか。 「こうやって普段目にされることのないイラストレーターさんとかの、絵を描いている姿がイベントとして見られるLIMITSという大会は本当に貴重で、これを見ている同じような職業の人たちにも何か届くのではないかって期待してますね」  それは女性の人たちという意味も含めて? 「そうですね。特にフリーでやってる人は女性だとけっこう不利な経験をしている人も多いと思うので。女性も男性も含めて、いま絵を職業にする人たちの立場が向上していくようになればとっても嬉しいですね」  イラストを描く業者から、1人のアーティストへ。  依頼されたものを依頼された通りに描く。それはそれで素晴らしい技術だが、その向こうにいる作者のパーソナリティに興味は抱かない。しかし、依頼主も鑑賞者も度肝を抜く発想力と、技術を見たとき、我々はその向こうの作者の顔が見たくなる。  もしかすると、それがアーティストとそれ以外を分ける一番の違いかもしれない。  本当に戦うのは男性なのか。女性は守りに徹してればいいのだろうか。外で戦う男、家庭を守る女。本当にこれが真実の姿なのかと葛藤しながら描いた絵は、まるで男女の格差から脱却しようと地元から飛び出してきたkathmiさんそのもののようだ。  ボクはその迷いが現れたkathmiさんの作品をとてもいい絵だと思った。 【大島薫】 作家。文筆家。ゲイビデオモデルを経て、一般アダルトビデオ作品にも出演。2016年に引退した後には執筆活動のほか、映画、テレビ、ネットメディアに多数出演する。著書に『大島薫先生が教えるセックスよりも気持ちイイこと』(マイウェイ出版)。大島薫オフィシャルブログ(http://www.diamondblog.jp/official/kaoru_oshima/)。ツイッターアカウントは@Oshima_Kaoru 写真集『大島薫に例のアレを着せてみた』が発売中
1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター@OshimaKaoru
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