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2月7日は北方領土の日「約10万人の市民を殺害したソ連の戦争犯罪」



ソ連の戦争犯罪を宣伝する戦略的外交を


 こうしたソ連時代の「戦争犯罪」は、戦後72年が経った今も解決していない。

 国際法上、こうした問題を解決するためには平和条約を締結する必要があるのだが、ロシアが北方領土の返還を拒んでいるため、ロシアと日本との間ではいまだに平和条約が結ばれていないのだ。

 日本政府としては、対ロ交渉を有利に運ぶためにも、「ソ連・ロシアによる北方領土の不法占拠は許されない」「降伏後に日本の民間人を殺害し、その財産を奪った責任は追及されるべきだ」と国際社会に対して宣伝すべきなのだが、残念ながら日本側の動きは鈍い。

 いまやわが国では、ソ連の不法行為で殺された日本人の存在はすっかり忘れ去られてしまっているかのようだ。

 実は忘れ去られてしまっているのではなく、忘れるよう工作をされてきたというべきかも知れない。

 何しろロシアはソ連時代から日本に対する情報工作を進めてきた。ロシアに都合の良い情報を相手国の学者やマスコミを使って意図的に流布させることは「アクティブ・メジャーズ(積極工作)」と呼ばれ、ロシア政府部内にはそうした対外情報工作を担当する専門部局が設置されている。

 この対日宣伝工作のうち、北方領土の返還を日本側に諦めさせるための宣伝工作活動が存在する。「コリャーク作戦」と呼ばれるこの作戦の存在を暴露したのは、ソ連・KGB諜報員スタニスラフ・レフチェンコだ。

 彼は1975年から1979年まで東京のKGB駐在部に勤務して対日工作にあたり、その後、アメリカに亡命した。そして1982年7月14日、アメリカ連邦議会下院情報特別委員会聴聞会において、対日工作の目的の一つが北方領土問題であるとして次のように証言している。

《コリャーク作戦をおこなうためのきわめて高度な活動を維持する。この作戦は、千島列島に軍を派遣したり、北方領土に新たな集合住宅を建設するなどによって、ソ連の意図に対する日本の認識に影響を及ぼし、この領土におけるソ連の支配に対して異議を唱えることが無駄なことだと日本政府に示す。》(佐々木太郎『革命のインテリジェンス』勁草書房)

 その活動は今なお継続中と見るべきだ。

 なにしろ平成27年、安倍政権のもとで終戦70年にあたって歴史認識を検討した21世紀懇「報告書」「安倍談話」では、北方領土の不法占拠を含むソ連による戦争犯罪について全く触れていないのだ。

 これは日本のマスコミも同様だ。マスコミの大半が北方領土問題についてあまり報じようとしないのは、ロシアの工作に何らかの影響を受けているからだろう。インテリジェンスの観点からすれば、ロシアの対日工作に日本は引っかかっていると言わざるを得ない。

 安倍政権の地球儀外交に対する評価は高いが、日ロ交渉に関して言えば、果たしてソ連の戦争犯罪について沈黙するような歴史認識で大丈夫なのか。

 ロシアとの交渉を有利に運ぶためにも、歴史認識を活用した戦略的外交を推進すべきだろう。幸いなことに、ロシアの軍事的脅威に警戒心を持つ国は、東欧や中欧アジアなどに数多く存在する。特にバルト3国やポーランド、トルコなどはロシアに対する警戒心が強い国として有名だ。

 日本がソ連時代の戦争犯罪とロシアによる不法占拠を追及する国際広報を繰り広げていけば、ロシアの軍事的脅威に警戒心を抱くヨーロッパや中央アジア諸国を中心に国際社会を味方にすることができるはずだ。北方領土問題も地球儀を俯瞰した戦略が求められている。

【江崎道朗】
1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など

’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など
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