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仮想通貨盗まれた男、漫画の初回打ち合わせに――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記〈第16回〉

―[「お金0.0」]―
 約1000万円近い仮想通貨を盗まれた出野達也(23歳)。漫画化決定に“何者かになれた”錯覚を起こした出野は有名実業家のAからたしなめられつつ、初回の打ち合わせ現場である有名実業家のBの会社へと赴く。盗まれーターは実在するのか――好奇な視線を送る担当編集者と作家を前にして……!? 「お金0.0」、連載16回目。初っ端から期待を裏切らない出野に注目です。 仮想通貨で1000万円稼いだ若者を襲った悲劇のお話 第16回 カリスマ性 ——-先週からのつづき 僕「あ、あの…」 A「ん?」 僕「Aさんは…なんでそこまでしてくれるんですか?」 A「言っただろ。いまんとこ、面白いからだ」 僕「いまんとこ…」 A「いまんとこ」 僕「じゃあ、もし、僕がおもしろくなくなったらもう手伝ってもらえないということですか」 A「俺がおもしろいとおもってるのは君じゃなくてこのチームがこれから作るものだ。だからもしこの流れを止めたくなかったら、チームから見て助け甲斐があるかどうかのほうが重要だ。つまり2分前の君の発言はなんとも幼稚であさましい。この車に助手席射出ボタンがついてたら車の外に放り出してたとこだし、次回までにつけとく」 僕「わかり…ました…」 A「あ、あと言い忘れたけど」 僕「はい」 A「読者のほうが達也よりよっぽどプロだ。そのうちわかる」 僕「はい…」 A「どっから駐車場入るんだろね。これ」 ——– —— — Aさんと僕は地下に続く駐車場の入り口を無事に見つけ、エレベーターでロビー階へ上がる。ロビー階に降りるとオシャレな人用のオシャレなカフェがあり、僕の高校の体育館くらいの広さのエレベーターホールが広がっている。 Bさんが社長を務める会社はこのビルの28Fにあり、まずは総合受付に来てくれとのご連絡をいただいていた。ご連絡をくだすったのはどう考えても美人ぽい名前の秘書さん。きっとこのエレベーターを上った先「総合受付」と呼ばれるところに居るにちがいない。 見たこともないようなきれいなビルには、きっと見たこともないような美人の秘書さんがいて、僕みたいな人間にも平等に微笑みを与えてくれるのだ。そんなとき、僕は自己紹介をする。こんにちは、本日お招きに預かりました、ビットコイン盗まれーたーの出野と申します。ぁあ。できればこんな肩書きで出会いたくなk A「行くぞ」 僕「はいぃ!」 エレベーターは僕の部屋より広かった。そして透明だった。 A「いったん30Fまで行って乗り換えるんだって。電車みたいだね」 僕「そうですね」 新宿区内で最も平和なやりとりをした僕らは30Fでエレベーターを降り、そこから別のエレベーターに乗ってちょっとだけ下に降りた。 「28Fデス」 ドアが開く。 「もしかして…出野さんですか?」 僕「はい!あ、あの、ビットコイン盗まれーたーの出野達也と申します」 猪「よかったぁー。今回担当するいのいしと申します。はじめまして!」 斎「出野くん実在するんですね!漫画家のさいのくにたろうです!」 僕「実在するんです!おかねはありませんが!」 A「…」 猪「それではこちらの会議室へどうぞ!」 僕「ありがとうございます!」 秘書さんはいなかった。代わりに元気な担当さんと、漫画家さんぽい漫画家さんがいてくれた。秘書さんには会えなかったけれども、この人達は見るからにいい人そうでにこやかだ。
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(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno

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