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日本の「避難所=体育館」は難民キャンプ級。公費でホテルに避難できる国もあるのに

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―  小学校入学の時のランドセルや就職活動の時の黒一色のリクルート・スーツなど、この国特有の思い込みに対しては、いろいろと突っ込んできました。  大学の新卒一括採用なんてのは、日本特有の現象で、入社式なんてのは、世界で日本及び日本に影響を受けたほんの一部の行事にすぎないんだぞ、とも言ってきました。 体育館 つまりまあ、この国で当然だと思っていることが、世界だと特殊なんだぞ、なんの根拠もないんだぞ、ただの思い込みなんだぞ、ということです。  それは、ネトウヨがよく使う「反日左翼」だからではなく、「思い込みだから、絶対の根拠があるわけじゃなくて、だからこの国のシステムは変革可能なんだぞ。君と僕の周りの世界はどん詰まりじゃないぞ」と伝えたいからです。  が、普段から気をつけている僕もこの「思い込み」だけは気付きませんでした。  ネットの『現代ビジネス』で「自然災害大国の避難が『体育館生活』であることへの大きな違和感」(大前治)という記事がありました。  西日本を襲った大きな水害で、多くの人は体育館に避難しました。クーラーがついているかどうかが問題になりましたが、そもそもそんなことじゃないと、この記事は教えてれます。 「日本と同じ地震国であるイタリアでは、国の官庁である『市民保護局』が避難所の設営や生活支援を主導する」と紹介して、「2009年4月のイタリア中部ラクイラ地震では、約63000人が家を失った。これに対し、初動48時間以内に6人用のテント約3000張(18000人分)が設置され、最終的には同テント約6000張(36000人分)が行きわた」りました。  このテントは約10畳の広さで、電化されてエアコン付きで、各地にテント村が形成され、バス・トイレのコンテナも設置されました。  これだけでもすごいなあと思っていたら「テントに避難したのは約28000人であり、それより多い約34000人がホテルでの避難を指示された。もちろん公費による宿泊である」ということなのです。
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避難者は援助を受ける権利者
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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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