サラリーマンでいるために個性は必要なのか?
高瀬:別の質問してもいいですか?俺は、42歳で会社辞めたんだけど、たぶんアラフォーで同じように「会社辞めようかな~」って思っている人は多いと思う。柴田君は投資家だったり、スタートアップを応援する立場の人間として、「どうしようかな、会社辞めようかな」と思っている人間に対してかける言葉はある?
柴田:最近「起業しろ、起業しろ」とTwitterで言う「起業しろ、おじさん」みたいな人が僕らの界隈にいますし、そういうムードはあるんです。でも全員が全員、起業するべきではないと思っています。ただ、自分で限界を作らなくていいのにな、とは思います。歳を取っていくと、家族やローンなど、起業を阻害する要因が増えていくので、動くなら早めに動いたほうがいいと思いますね。背負うものがないうちにそう思ったら、即動いちゃえと。30年後のキャリアプランを描けと言われても、その時にクルマを運転してるかもわからない世界ですし、今の仕事が半分ぐらいなくなってるかもしれないし、今までの「こうしたほうがいいよ」とか「こうすべきだ」、という生き方は足枷になっちゃうよ、と思いますね。
高瀬:たしかに、俺が結婚して子どもいたらどうなっていたかわからないよね。柴田君もそうだよね。
柴田:そう思います。でも、将来への漠然とした不安というのは抱えていて、それは誰も教えてくれないので。わからないことに対する不安は、受け入れた瞬間、ものすごく楽になりますよね。
30年後、今の仕事が半分ぐらいなくなってるかもしれないなか、今までの「こうしたほうがいいよ」とか「こうすべきだ」、という生き方は足枷になるだけ
高瀬:わからないことが不安なのは、当たり前だろうね。なぜなら、わからないから(笑)。初めて入ったお化け屋敷みたいな。2回目以降じゃないからね。世の中どうなるかわからないし、会社がなくなるかもしれないことをアタマではわかっていても、会社員でいることに対してなんで安心というか、心の拠り所になるんだろうね? 忠誠心とかが理由ならまだ健全だけど、それもないのに……、という人って多いよね。
柴田:うまく思考停止できるんですよね。楽なんですよ。それを学校に入った時からやっているんですよね。小学校に入った時から「ああしなさい、こうしなさい」と言われ、中学に入ると「いい高校に入りなさい、できれば大学に行きなさい」、大人になると「結婚しなさい」とか言われて。就職活動の時も「自己分析は?」「あなたは何がしたいの?」って言われて……。でも、「そんなのないし! 言われてきたから、やってきただけです」ってなるんですよね。それで、無理やり自己分析とかしちゃって、海外とか行っちゃって。
高瀬:たしかに(笑)。Twitterでちょっとバズってたのがあって、「小学校、個性を認めない。中学校、個性を認めない。高校、個性を認めない。大学、個性のあるヤツがカッコいい。就職面接、『あなたの個性は何ですか?』と問われる。入社後、個性を認めない。」ってヤツ。超笑ったんだけど(笑)。
柴田:僕が言いたかったのはそういうことですよ。入社の面接の時だけ、「あなたの個性は?」とか言うけど、「散々消してきたのに、よう言うわ!」と。それで、会社に入ってからも消すんですよ。あれ、滑稽ですよね。
高瀬:まだ、全部個性を認めないならわかるけど、大学の時は個性的な奴がカッコよく見えてくるんだよね。確かに、入社のときも「個性のあるやつが欲しい」と言われる。
柴田:でも、結局消しちゃうんですよね。システムおかしいな、と思って。高校までそれでいいとして、大学の個性を活かしたままその後いくならいいと思うんですけど。それまでは、下積みじゃないけど、自分を理解して、学ぶ機会だと。そこから羽ばたけばいいのに、また個性が消されちゃうから、戻っちゃうんですよね。
~第3回へ続く~
高瀬敦也
株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。フジテレビのプロデューサーを経て独立。音声と写真のコンテンツプラットフォームアプリhearrの企画やマンガ原作・脚本制作、アイドルグループ、アパレルブランドのプロデュースを手掛けるなど、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。著書に『
人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
柴田泰成
ソラシードスタートアップスタジオ代表パートナー。楽天、リクルートを経て独立。サムライト株式会社を設立し代表取締役を務める(2016年に朝日新聞社に売却)。同時に独立系VCソラシード・スタートアップスの代表を務め、シード投資や共同創業を15社以上実行する
<取材・文/高橋孝介 撮影/Coji Kanazawa 取材協力/恵比寿でですけ>