勝間和代「迷路の外には新しい世界が広がっていた」――『チーズはどこへ消えた?』続編を語る
全世界で累計2800万部を突破した『チーズはどこへ消えた?』が日本で発売されてから今年で19年。一昨年の17年に著者のスペンサー・ジョンソン氏は亡くなってしまったが、彼の遺作であり、『チーズ』の続編である『迷路の外には何がある?』が今年2月に出版された。今回、生前のスペンサー・ジョンソンと面識のある数少ない日本人の1人で、『チーズ』の愛読者でもあった経済評論家の勝間和代氏が書評を寄稿してくれた。勝間さんが『迷路』に共感した、その胸の内とは――。
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チーズが消えた迷路――。
これはそこに残ることを決意した小人・ヘムのお話。
環境が変わっても、ひとは簡単に変われない。でもそんなヘムに大きな転機が訪れる……。
本作は、前作でチーズを探して変化に対応して旅立つことができたホーではなく、昔は潤沢なチーズが出ていたステーションCに残ることをこだわった、ヘムの話です。
前作ではこれまであった報酬をチーズになぞらえましたが、本作ではいかに、間違った信念に私達が囚われ、過去の考え方に迷宮のように閉じ込められているか、という意味で表現されています。
著者のスペンサージョンソン氏のすごさは、誰でも薄々わかってることをシンプルな寓話で、「なるほど、そういうことだったのか」と、腹落ちをさせることです。氏のストーリーは実は何回も何回も書き直されていて、わずかな言葉にも無駄がないように、読者を導いてくれています。
ヘムはなぜステーションCにこだわるのか。それはステーションCがヘムのこれまでの人生の全てであり、ヘムのアイデンティティーであり、そこを出ることは、自分のこれまでの人生を否定するかのように、ヘムには思えていたからです。
幸いヘムは良き友人ホープの行動や、ホーが色々なところに残していってくれたヒントにより、自分の何がうまくいっていなかったか、なぜチーズを見つけることができなかったのか、その理由に気づき、前に進んでいけるようになりました。
私自身もヘムと同様、LGBTであることは公開すると自分にとってマイナスの事しか起きないと、以前は迷路の中で信じ込み、また、チーズがすでになくなっていたにもかかわらず、テレビ出演のような前のスタイルの仕事にこだわり続けていました。
しかし、カミングアウトをしても、自分が得意でないので辞めたいと思っていたテレビ出演をなくしてみても、マイナスはまったくないばかりか、迷路の外には新しい世界が広がっていました。
誰も彼もが、ヘムのようにさまざまな自分の過去の信念に囚われていると思います。どうやって過去の信念を自分と切り離すのか。この本は読者にとって、ヘムを助けたホープのような役割を果たしてくれることでしょう。
文/勝間和代
大ベストセラー『チーズはどこへ消えた?』の続編は過去の信念から逃れるヒントになる
『迷路の外には何がある?――『チーズはどこへ消えた?』その後の物語』 スペンサー・ジョンソン著。日本で400万部、全世界で累計2800万部突破の大ベストセラー『チーズはどこへ消えた?』の続編。閉塞した状況を打破し、人生と仕事の変化に適応する道を示す |
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