ニュース

夫婦喧嘩で夫の大麻使用を疑う…妻はなぜ気がついた?<薬物裁判556日傍聴記>

妻が自分を救ってくれた

検察官「奥さんと、お子さんは、あなたが勾留されている間に面会には来てくれましたか?」 被告人「子供は来ませんでした。妻は1回だけ来ました。」 検察官「どんな話したんですか?」 被告人「とにかく謝りました。迷惑かけたということと、あとは妻に感謝をしました。それはなぜかというと、妻が今回、私が持っている大麻を見つけていただいたおかげで、私はこの場にいて、もし妻が見つけることがなければ、もっと大変なことになっていたかもしれないので、早くこういうふうになったので、私は、すごくよかったなと思っています」 検察官「奥さんが見つけたというのは、どういうことですか? 警察官が、あなたの家に捜索に行ったんですよね?」 被告人「警察官が最後の時に、全部取り調べが全部終わった時に、刑事さんがそういうふうに話していました」 検察官「ふん。そうですか。奥さんが見つけたんだと? そういうふうに言ったんですか?」 被告人「はい。あの妻の通報でっていうふうに言っていました。」 検察官「ふーん。そうですか。で、あなたは、それについては、自分を見つめ直すキッカケになったと思っているということなんですね?」 被告人「はい」 検察官「はい。で、今後同じようなことを繰り返せば刑務所に行くということはわかっていますね?」  被告は逮捕されたことにより、愛娘の誕生日を祝えず留置場で一晩中泣いたと説明します。裁判での心証を考えてという見方もあるでしょうが、これは本音という気がします。こうした家族の大事な日も、罪を犯せば台無しになってしまうわけです。  そして、最後にはこの逮捕が奥さんの通報で警察の家宅捜査が入ったのがきっかけということが明らかになります。道義的には奥さんのしたことは誤りではないでしょう。もちろん非は夫にあります。とはいえ、まず当事者の夫を質して、自首や夫婦で警察に行くという選択肢もあったような気もしないではありません。裁判ではこうした日頃の夫婦関係などまでが浮き彫りになります。

今回の判決は…

 今回の裁判は結論ありきのようなものですが、以下判決になります。 裁判官「それでは、あなたに対する大麻取締法違反被告事件について、判決を言渡します。主文、被告人を懲役1年に処する。この裁判が確定した日から3年間、その刑の執行を猶予する。横浜地方検察庁で保管中の大麻4袋、平成29年横検領第xxxx号符合1ないし4を没収する。主文は以上です。  懲役1年という刑を言い渡しはしましたけれども、その刑には3年間の執行猶予がついています。したがって、あなたが直ちに刑務所に行くということはありません。今後3年間、新たに罪を犯すことなく、平穏に過ごすことが出来れば、この1年の刑は実際には執行されない。刑務所には行かずとも済む、ということになります。他方で今後3年のうちに、再び罪を犯して処罰を受けるという事態になった場合には、この執行猶予は取り消されて、新しく犯した罪の刑と併せて、今回の1年の刑に服さなければならなくなるものと覚悟をしてください。  またこの3年の執行猶予期間が無事に経過した後であっても、再び罪を犯してしまうと、その事件を決めるにあたっては、ここで1度執行猶予付きの判決を受けているという事実は非常に重く、要するに新しい事件が実刑になる方向で考慮されるということになります。  したがって、3年の執行猶予期間が経過する前はもちろんのことですけれども、それが経過した後であっても、もう2度と、もう一生、大麻や薬物に限らず、あらゆる犯罪を犯してはいけない。そのような意味の判決だと受け止めてください。意味わかりますね?」     ***  最後の裁判官による判決は、即決裁判は「無罪」を言い渡す場ではないという確認だろう。上で検察官が話すように、「誓っている人たちの半分位は、また使って、また所持してここに逆戻りして、そのまま刑務所に行くと、そういうことになっています」と、まるでルール説明のように言う。こうした裁判官や検察官の発言は、薬物事案の累犯が絶えないことへの嘆きとも呆れともとれる。 <取材・文/斉藤総一 構成/山田文大 イラスト/西舘亜矢子>
自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す
1
2
3
※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中 https://note.mu/so1saito/n/nb6bde5f57745
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート
ハッシュタグ