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台湾を独立国家と認定。米台軍事同盟復活か/江崎道朗

中国は戦略的競争相手。米台間の軍事交流が復活


 ところが’16年11月、大統領に当選したトランプは、台湾との関係強化に奔走する。当選からわずか1か月後の12月、トランプは台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、その直後に成立した「’17年度国防授権法」で米台間の軍事交流について初めて明文化し、台湾海峡にミサイル駆逐艦を頻繁に派遣するようになった。  翌’17年12月、トランプ政権として初めて公表した「国家安全保障戦略」(NSS)において、中国を「戦略的競争」相手と名指しで批判した。1979年以来、38年間も続いた親中路線の転換を打ち出した一方で、オバマ民主党政権では言及されなくなっていた、台湾関係法に基づく台湾武器供与を明記した。  そして同じ12月に成立した’18年度国防授権法で、米艦艇の台湾寄港、米軍の演習への台湾の招待、台湾への技術支援などを促進する条文を盛り込んだ。  翌’18年3月には、台湾旅行法が成立、米政府の全レベルの高官の訪台、台湾高官の訪米および米政府高官との交流を許可した。  その2か月後の5月には、台湾で米台国防フォーラムを初開催し、8月に成立した’19年度国防授権法では、台湾との防衛協力強化を明記した。  そして今年6月、米国防総省が公表した「インド太平洋戦略報告書」において台湾を協力すべき「国家(country)」と表記した。事実上、台湾を独立国家と認定したわけだ。  ここにきて米台軍事同盟復活へ、「トランプ・ショック」が現実味を増している。
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

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