更新日:2019年09月27日 15:37
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“戦争発言”丸山穂高議員の北方領土問題でロシアの高笑いが聞こえてくる/江崎道朗

丸山穂高

※丸山穂高公式ホームページより

北方領土問題でロシアの高笑いが聞こえてくる

 北方領土をめぐるドタバタと日本の弱腰外交を見ていると、思わずため息が出てくる。  まず、日本維新の会の丸山穂高衆院議員が、北方領土へのビザなし交流訪問団に同行していた5月11日夜、国後島の宿舎で元島民の団長に対して「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか、反対ですか」などと質問した件だ。  あたかも「北方領土を戦争で取り返そう」と主張したかのように受け取られているが、「戦争すべきだ」と主張したわけではない。  だからといって、問題がないわけではない。  第一に、戦争という手段を使ってまで領土を取り返すことの是非を、元島民に、しかも酒の席で聞くというのは余りにも不謹慎だ。政治家の発言としては軽すぎる。  第二に、北方領土を取り返すに際して軍事力の行使も選択肢に入れるべきだと考えているならば、丸山氏はそうした方策を党内でしっかりと議論し、党の方針として打ち出すよう努力すべきだった。  アメリカもイギリスもドイツも、「力の信奉者」ロシアに対して軍拡で対抗し、ロシアから譲歩を勝ち取っている。こうした事例を踏まえるなら、ロシアに対して軍拡で対抗することは有効だ。だが維新の会から除名されたということは、丸山氏は党内でそうした議論をしてこなかったと思われる。  第三に、沖縄を含む南西諸島防衛を重視する安倍政権は、北海道の自衛隊を南西諸島に振り向けており、北海道の兵力は大幅に削減されている。今の日本に、軍事力で北方領土を取り返す態勢など存在しない。そもそも自衛隊にそんな力はない。よって丸山氏の発言を、ロシア側はせせら笑っているに違いない。
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英米のようなしたたかな対ロ交渉がない日本
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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