更新日:2019年09月27日 15:37
ニュース

「安倍首相がトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦」の話が今さら出た舞台裏

米朝首脳会談

(写真:ホワイトハウス公式HPより)

なぜ今、「ノーベル平和賞」推薦の話が出たのか?

 安倍首相がトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したことが内外で話題になっている。  ことの発端は2月15日、ホワイトハウスの記者会見でトランプ大統領が突然、「私は日本を代表して、敬意を込めてあなたを(ノーベル平和賞に)推薦しました」とする安倍首相の書簡を紹介したことだ。  ノーベル平和賞についてはこれまでも、昨年6月の米朝首脳会談の実現などにより米共和党の下院議員らがトランプ大統領を推薦したほか、韓国の文在寅大統領も南北首脳会談直後に「トランプ氏が受賞するべき」との考えを示している。だが、トランプ大統領と異なり、優れた指導者であると見なされている“あの”安倍首相までが「推薦」したということで、トランプ大統領の発言は各国のメディアで大きく報じられた。  この推薦については複数の日本政府関係者が認め、「過去の首脳会談の場で、トランプ氏に5枚ほどのノーベル平和賞の推薦状のコピーを(首相が)示した」と語った。  この問題は国会でも取り上げられ、安倍首相は2月18日の衆院予算委員会で推薦について「ノーベル賞委員会は推薦者を50年明かさない」とコメントを避ける一方、「事実ではない、と申し上げているのではない」と述べた。  これに対して、立憲民主党会派の小川淳也議員らが「ノーベル賞はあり得ない。日本として恥ずかしい」と批判した。朝日新聞も18日付のコラム「天声人語」で、「ノーベル賞級のお追従」とのタイトルで「いかにも外聞が悪い」などと安倍首相の対応を非難したが、批判だけなら誰でもできる。重要なことは、これをいかに国益に繫げるか、ではないのか。  考えるべきことは、なぜトランプ大統領は昨年の「推薦」の話をわざわざこの時期に持ち出したのか、ということだ。
次のページ right-delta
対北朝鮮外交に対する「深い懸念」
1
2
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

経済的安全をいかに守るか?


経済的安全をいかに守るか?実践的な入門書が発売!

 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

記事一覧へ
おすすめ記事