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<純烈物語>進むべく道に導いてくれた巨匠たち<第5回>

琴姫さんの旦那さんはまさかの……

 2009年に氷川きよしの『ときめきのルンバ』で第42回日本作詩大賞に選ばれ、翌年には天童よしみの『人生みちづれ』で2年連続受賞。三軒茶屋のスタジオでピーチクパーチク歌っている自分たちのために書いていただくにはあまりに恐れ多い、その筋の大人物だった。 「ちょっと琴姫さん! なんでこんな大きなことを今まで言ってくれなかったんスか?」 「水木とつきあうと、そういうシステムに純烈が組み込まれちゃうと思ったの。たとえ変な曲だと思っても、A面でリリースしなければいけない。水木と仕事をするのは、そういうことなのよ。演歌、歌謡曲の厳格な決まり事に純烈をハメたくなかった」  ボイストレーナーのおばちゃんとしか見ていなかった琴姫が、そこまで深く考えて純烈と接していた事実に酒井は言葉が詰まった。そしてそれをグイっと飲み込むと、こう返した。 「琴姫さん、ありがとう。でも俺は、そういう世界に踏み込んでいろんな勉強をしたいと思っているんです。純烈を成功させるためなら、そこでも勝負しなければならないっていう覚悟はできている。だから……水木さんに詩をお願いします」  こうしてできあがったのが『キサス・キサス東京』(2011年7月20日リリース)だった。今でも「ファンの間で支持が高い曲」と胸を張るが、じつは純烈のシングルの中ではもっとも売れず、ユニバーサルミュージックとの契約を打ち切られる。  ただ、そこで現実に打ちひしがれながらも「純烈を続けるんだ」という気持ちを持続できたのが、現在につながっていると酒井は言う。クラウンレコード移籍後第1弾となる3枚目のシングル『恋は青いバラ』(2013年1月9日)も、水木に作詞を依頼した。  さらに、ここで思わぬ人物が「若いリスナーのためにムード歌謡を作るのは僕も通用するかどうかドキドキなんだけど、やらせてもらえない?」と名乗りをあげてきた。あの『ラブユー東京』の作曲者・中川博之だった。  中川は4枚目のシングル『スターライト札幌』(2014年1月8日)を遺し、リリースから5か月後に77歳の生涯を閉じた。純烈のことも目をかけ、酒井らにとっては恩人と言っていい。  これほどの巨匠たちが、なぜムード歌謡の世界では青二才の自分たちをかわいがってくれるのか。それを熟考することで酒井は純烈の立ち位置を客観的に考えた。 「よく『純烈はなぜ人気があるのだと思いますか?』って聞かれるんですけど、自分は犬とか猫とかに対する愛し方に似ているんじゃないかと思っているんです。犬に『お手!』とやったら、なんとかやろうとするんだけど届かない。その可愛げや一生懸命さが純烈にはあるんじゃないかっていう。番組で使った人たちが、大してできないんだけどまた一緒にやりたいと思うような。  その場が大御所ばかりだと、なんとなく疲れてきちゃうじゃないですか。純烈みたいなのを置いておいて石川さゆりさんの『天城越え』を聴けば、ちょっとお茶して気分を戻してから聴けるみたいな。だんだん北島さん、前川さん、石川さんも見たいんだけど純烈も見たいってなっていったんじゃないかな。あんなに頑張ったんだからさ、持ち歌一曲ぐらいは歌わせてあげようよ……みたいなね」  制作サイドに限らず、その世界の先人や大物たちも同じ姿勢で支え、ある意味育ててきたのだろう。ただしそうさせるのは、純烈が思い入れを持てる対象であるから。12年かけて耕してきた磁場は、これからも縁を引きつけ続けるはずだ。 ※次回からは6月12日に「マッスル」とのコラボレーションでおこなわれた「純烈のNHKホールだよ(秘)大作戦」の潜入リポートをお送りします。お楽しみに! 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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