お金

ソニーがV字回復した4要因、ポイントは「正月のお年玉をガメるお母さん」

答え2:付加価値の高い商品だけに力を入れた

 2つ目の答えは、不調の原因と言われたエレクトロニクス事業にありました。  エレクトロニクス事業は、2011年から5期連続で部門営業赤字を出していました。しかし、今ではテレビ・音響の事業もエンタメ事業とまではいきませんが、利益がでる構造になっています。  なぜ利益を出すことができたのでしょうか。  答えは、テレビやカメラの製造を「付加価値の高い商品」に集中させたから。  かつての日本の家電メーカーは、それなりに高品質なものを低価格で、スピーディに生産することに力を注いでいました。しかし、2000年代後半に入ると、HUAWAIやサムスン、LGなど中国、台湾、韓国などの家電メーカーが台頭。どの商品のスペックも変わらず、単なる価格競争の争いになりました。結果起きたのは、家電製品のコモディティ化です。どれを買っても同じ。だったら安いものがいいよね? ということで日本の家電メーカーは近隣諸国のメーカーに後塵を拝することになったのです。  そこで生き残る秘策は一つしかありません。みんなと同じ競争をやめて、独自の価値を、特定の人だけに提供する戦略です。それが、ソニーにとっては高付加価値の商品だけを提供する戦略だったのです。  私も、その「高付加価値の商品」に惚れ込んだ一人です。  私馬渕は、ソニーが2018年に販売したカメラ「α7Ⅲ」を愛用しています。価格が20万円以上する商品ですが、現在まで大ヒットしています。カメラ撮影時に求められるプロフェッショナルさはさほどいらず、きれいに写真を撮れるので初心者にとってもとても使いやすいこのカメラ。まさに、「カメラが苦手だけどキレイに撮りたい。お金はちょっと多めに出してもいい」という消費者に刺さったわけです。

答え3:影の立役者・半導体事業のヒミツ

 ゲーム事業の躍進にフォーカスが当たりやすいソニーですが、半導体事業もV字回復の大きな立役者になっています。営業利益を見てみましょう。 2017年3月期…▲78億円 ↓ 2018年3月期…1640億円  1年で1700億円ほど利益が伸びています。  ここで少し不思議に思った人もいるのではないでしょうか。  日本メーカーの半導体事業といえば、この10年間は不況のニュースが続いていました。東芝や日立など、かつて世界のトップを走っていた企業が、サムスンを中心とした韓国メーカーに押され、事業縮小を余儀なくされました。しかし、ソニーは違いました。  スマートフォンやタブレット端末向けのイメージセンサーの販売数量が大幅に増加し売上に大きく貢献していたのです。実は、ソニーの半導体事業は、自社の業績が低迷していた時期にも他社に先行して投資を続けていたのです。  その拡大路線は今も変わらず。2018年には、2020年まで最大7000億円の投資を検討すると発表しており、積極的な拡大路線を突き進んでいます。  特に好調なのは、CMOSイメージセンサー。これは光信号を受け取り、電気信号に変える半導体のことで、カメラやスマホに搭載されているもの。スマホの需要が急増はすなわち、CMOSセンサーの需要増加を意味します。ソニーはCMOSセンサー市場のシェア50%を誇っています。  今後は、自動運転技術が搭載された自動車に使われる半導体の開発に力を注ぐようです。この市場が拡大すれば、ソニーの半導体事業はさらに大きくなることは間違いありません。
次のページ right-delta
ソニーの半分を占める金融部門
1
2
3
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ