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ソニーがV字回復した4要因、ポイントは「正月のお年玉をガメるお母さん」

答え4:ソニーの体力の50%以上を占める金融部門

 ここまでで、ソニー好調の背景がかなり明らかになったと思いますが、さらに同社の裏側を読み解くべく、同社の財務諸表(略して“BS”=Balance Sheet)を見てみます。  ここまでV字回復の要因を色々と説明してきましたが、本質的なソニー好調の背景はこの4つ目の理由に隠れています。  突然ですが、ソニーの売上の1位はゲームですが、2位は何でしょうか。  答えは、金融です。これが、ソニーV字回復要因の4つ目の答えです。  ソニーは、2004年に子会社としてソニーフィナンシャルHD、ソニー生命、ソニー銀行、ソニー損保などを統括する事業再編を行いました。これがV字回復にもっとも大きく影響を与えたのです。上表を見てみましょう。  ソニーの金融部門の資産額を見ると、その額は、約14兆円。非金融部門の2倍(約7兆円)になっています。  つまり、ソニーの体の半分は金融部門でできているのです。ソニーにとって、金融部門が強いことがいかに重要かわかるのではないでしょうか。  もう一つ注目してほしい点があります。  金融部門の資産の85%にあたる、約12兆円が負債で調達されています。この負債とはなんのことでしょうか?  答えは、ソニー銀行の顧客が預けている「預金」や、ソニー損害保険やソニー生命が契約書のために積立てている「準備金」のことです。  これ、とても重要です。もはや、エレクトロニクス事業のことや半導体のことよりも、この負債のほうがとても重要なポイントになっています。ソニーの負債は、銀行から借り入れている負債ではなく、顧客から預かったお金。そのお金を運用して増やしているのです。つまり、会計上は負債が膨らんでいるように見えますが、そのほとんどは「借入金」ではなく、顧客からの「預り金」。  このソニーの状態は、こう考えるとわかりやすいかもしれません。  昔、お正月に親戚のおじちゃんからお年玉をもらったときに「これはお母さんが預かっておくね」と言われたことはなかったでしょうか?  それが今のソニーが好調である理由です。  お母さんが、消費者金融からお金を借りるのと、息子から預かったお年玉を株式投資に当てて収益を増やそうとするのでは大きく違いますよね。ソニーの金融部門は、それを粛々と実行しているのです。  前者は単なる借金ですが、後者は家計を増やすために“一時的に”息子のお年玉を預かっているのです(ちゃんと、お母さんはお年玉を返してくれるはず…)。  話を戻しましょう。  ソニーは金融部門の比率が大きいため、他のメーカーより自己資本比率が低くても財務諸表上、安全性に問題はないと言えるのです。  PLとBSを見るだけで、ここまで企業のイメージは変わるもの。  経営者の資質のみに着目するのでもなく、PLとBSという無機質なグラフだけとにらめっこするのでもなく、その両者を観察することで「気になる企業の未来」はクリアになっていくのです。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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