更新日:2019年12月30日 02:38
エンタメ

<純烈物語>浮世離れしたものを見せたあと、普段通りのショーを…<第10回>

「それじゃあな!」酒井にアンドレザ対策を授け、颯爽と去る前川清

 酒井にアンドレザ対策を授けると、前川は「それじゃあな!」と去っていった。時間にすればほんの数分……こんなぜい沢な“使い方”は『8時だョ!全員集合』でもやらなかった。 「……アンモニアの匂いといえばおしっこ。おしっこといえば……ああっ! お漏らししてまだ履き替えていなかった俺のパンツだ!」  純烈をクビになりパンツを履き替えるどころではなくなったことが幸いするとは、これが芸能界というものなのだろうか。適度に湿った切り札を高々と掲げた酒井は、それをアンドレザの顔面に付着させる。  熟成された猛臭の前に、さすがの熊猫山脈も昇天するしかなかった。観客は、冒頭のお漏らしが安易な下ネタではなくここで回収されるためのものだったことに気づく。  酒井一圭、アンドレザ・ジャイアントパンダに勝つ!(たぶん) 両国のバトルロイヤルで敗れた借りをNHKホールで返すなど、4か月前はササダンゴ自身も想像していなかっただろう。  闘い終わってノーサイドなのはスポーツもムード歌謡も変わらない。たとえ一日限りであろうとも、アンドレザも立派な元メンバー。「また5人(正確には4人と1匹)で一緒に歌わないか?」と誘い、見事なまでの呼吸で『プロポーズ』を披露した。 「立場的には自分たちから言えなくても、辞めていったかつてのメンバーに対する思いはずっと残っていると思うんです。それは部外者である自分だから描けること。でも、このタイミングで友井(雄亮)さんに声をかけるわけにはいかない。じゃあもう一人、元メンがいるだろうということで、無理して根室から来てもらったんです」(ササダンゴ)  アンドレザを単なる客寄せパンダとはせず元メンバーの象徴的存在として起用し、そこから先は受け手側に膨らまし方を委ねる。ストレートで投げたら賛否両論を巻き起こしてしまうが、変化球を使えば是非の二択ではなく“ハッピー”という3つ目の選択肢を描ける。それこそが、ササダンゴことマッスル坂井が「マッスル」で見せてきた世界観だった。
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エンディングでは…
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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DVD『純烈のNHKホールだよ(秘)大作戦』10月2日(水)発売

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