エンタメ

<純烈物語>浮世離れしたものを見せたあと、普段通りのショーを…<第10回>

いつもどおりの純烈ショーに戻ると……

 後半戦はいつも通りの純烈ショー。1時間半近い第1部を見たあとでもメンバーはもちろん、客席のテンションも落ちなかった。むしろマッスル仕様の舞台が温めたことで、履き慣れたジーンズのようなフィット感に心地よさが加えられたように思えた。  ササダンゴは「第1部自体が2部を温める役割」と認識した上で、ネタのさじ加減を量っていた。よい作品に出逢うと、その二文字の間には見えない“込”の無声音がはさまれていることを痛感させられる。  作品とは、作り込んだ上での品であって、それによって初めて作品たり得るのだと。当連載で純烈のMCは台本がなく、即興性の中で展開されていると書いた。ただし、何百何千という経験の積み重ねによって培われたものであり、行き当たりばったりやなんとなく馴れ合いのようにやり合っているシロモノとは違う。  いいモノを作りたい、クオリティを高めるために作り込みたい。そんな純烈の姿勢をラーニングすれば、第1部の適切な濃度は弾き出せる。おしっこを我慢し、クビを切られ、新旧メンバー全面対抗戦を闘い、巨大パンダにぶつかっていったあとに、それでもちゃんと12曲熱唱するあたりがプロの仕事なのだと思えた。  すべてのプログラムを終えたメンバーは報道陣向けの挨拶を済ませたあと、あこがれのトイレ付き控室へ戻り解放感に浸った……のではなく、その足で会場エントランスへ。どんなに疲れていても純子&烈男の皆さんを見送るのを忘れなかった。  プロレス業界をV字回復させた男、棚橋弘至(新日本プロレス)はメインイベントで30分以上の激闘を繰り広げたあともファンが求めるエアギターを派手なアクションで奏で、キメのフレーズ「愛してま~す!」を叫び、一秒でも早くバックステージへ戻ってぶっ倒れたいはずなのにそこからリングサイドへ押し寄せたファン一人ひとりとスキンシップを交わすべく、リングを一周する。これを、どんな地方会場でも続けてきた。  それはもはや「棚橋劇場」という作品。そしてそこにも“込”の文字が間に隠れている。白でも黒でもない、ハッピーという答えとともに。  ’19年6月12日、初のNHKホール単独公演は純烈紀元前から培ってきたものの集大成であり、神髄であり、さらには進むべき方向性が間違いではないことを確認できた場だった。あとはその信念力を武器として、大晦日に同じ会場のステージへ立つだけだ――。(この項終わり、次回新章につづく) 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
1
2
3
4
DVD『純烈のNHKホールだよ(秘)大作戦』10月2日(水)発売

テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート