更新日:2023年05月15日 13:05
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米中冷戦、香港問題を他人事のように眺める日本/倉山満

日本のチャイナウォッチャーは、当事者意識が薄いだけでなく視野狭窄で、頭が痛い

 ところで、今回の騒動は、トランプが、アメリカが仕掛けたのか?  レーガンの時はソ連に本格的に喧嘩を売るのは自国の経済を立て直し、同盟国の結束を固めてからだった。今のトランプは、いずれの条件も満たしていない。確かに、米中貿易戦争はトランプが仕掛けたが、大統領選向けのパフォーマンスであり、最初から妥協地点を想定していた。そんな時に、第三次世界大戦を覚悟する中国潰しを仕掛けるか。トランプにレーガンのような力が無いのはわかっているし、大統領選挙再選の前に仕掛けるのは時期が悪い。  もちろん、中国共産党は米英の陰謀や介入を非難する。確かに、そうした動きはあるのだろう。学生運動に物資の補給があるのは、支援する勢力があるからだろう。江沢民派か、CIAやMI6か。いまだ暴動は続いているが、勢いは縮小している。  弾圧する側の習近平も、「第二の天安門」と言われるのを嫌がっているので、世界が忘れるよう真綿で首を締めるように着地点を探している。そうした、関係するアクターの思惑の中で、どこに結末が転ぶかを予想する言論に何の意味があるのか。  日本人自身が「どうなるか? ではなく、どうするか!」という意識で、現在の状況を真剣に分析する必要があろう。  米英が香港に手を突っ込んでいるのは、確かなのだろう。香港は中国の縄張りなのだから、一見、攻勢に見える。しかし、本質的には守勢だろう。戦いでは、防御だけでは敗勢に追い散ることが多い。だから、防御のために攻撃を加えることもある。では、アメリカはどこを守りたいのか。台湾である。  韓国でも同じように文在寅大統領側近の法相が馘首(かくしゅ)されるなど、反米勢力が血祭りにあげられている。しかし、韓国を取り返せる訳ではないので、これも防御の為の攻撃。本質は守勢である。では、どこを守らねばならないのか? 日本列島である。  日本のチャイナウォッチャーは、当事者意識が薄いだけでなく視野狭窄で、頭が痛い。  12月2日、アジア開発銀行の新総裁に浅川雅嗣前財務省財務官が就任した。麻生太郎財務大臣と関係が深く、異例の出世を遂げた人物である。その浅川新総裁が就任即日、「ドル依存をやめるべき。東アジア統一通貨を」とぶち上げた。  これだけで「何を言っているのか!?」と眉を吊り上げたくなるが、既に経済大国となった中国への融資をアジ開が打ち切るかどうかは、「丁寧に議論する」と条件をいくつも並べる。未来永劫、中国に貢ぐと宣言しているようなものだ。  2019年7月15日の本連載で、トランプがファーウェイへの制裁解除を発表した直後に、IIJ(インターネットイニシアチブ)社がファーウェイ製のスマホの大量販売を公表した事実を指摘した。IIJの勝栄次郎会長は、元財務事務次官。浅川氏にしても、勝氏にしても、財務省内の強硬な増税派だ。  良質なチャイナウォッチャーは、世界中に魔の手を伸ばす中国に警鐘を鳴らしている。中国が世界中にあらゆる方法で進出しているからだ。  悲観的に備えるしかない!
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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