更新日:2019年09月27日 15:15
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トランプは中国との貿易戦争を6月のG20までと決めていた節がある/倉山満

金正恩とトランプ大統領

6月30日、板門店の軍事境界線を挟み、互いの腹に一物ありながらも握手をする金正恩朝鮮労働党委員長と、米国のトランプ大統領。満面の笑みは台本通りだろうか?(写真/時事通信社)

トランプは中国との貿易戦争を6月のG20までと決めていた節がある

 日本人にとって、香港情勢と消費増税は独立した二つの問題ではなく、つながっている一つの問題である。果たして、何人の日本人が自覚しているであろうか。  そもそも、今の日本は独立国家ではない。敗戦以来、アメリカの持ち物とされた。それにソ連や中国が「そいつを俺にも寄越せ」とちょっかいを出してくる。最近では北朝鮮や韓国にまで舐められる。  例えるならば、滅び際の清朝や李氏朝鮮のようなものだ。昔の中国や朝鮮は、どこか一つの国の植民地にされることはなかった。多くの大国に小突き回され、食い物にされた。  今の日本は、米中代理戦争の舞台(シアター)である。当事者(アクター)であろうとする意志を捨てている。だから、大国(パワーズ)に振り回されるのだ。  アメリカのトランプ大統領は、昨年から中国に貿易戦争を挑み、中国の習近平主席が悲鳴をあげていた。特に、携帯電話で有名なファーウェイを締め上げた。同盟国のカナダが同社社長を逮捕したのを皮切りに、禁輸措置の対象とした。  これに呼応するかのように、香港でも100万人規模のデモが起こる。きっかけは、大陸本土への犯罪者の引き渡しに対する抗議だった。だが、当局の自由自在にされては、中国共産党に敵対する人物は、香港に入った瞬間に犯罪者扱いされて、大陸に送られかねない。自由を奪われまいと声を上げたのだ。米英もデモへの支援を表明した。  だが、トランプは中国との貿易戦争を6月のG20までと決めていた節がある。その理由は、自身の大統領選挙だ。トランプの地盤は決して盤石ではなく、中国に対し強硬な主張をしなければ支持層の対中強硬派が納得しない。しかし、経済制裁は仕掛けた側も貿易の利益を失う。いつまでも続けていては、中国との貿易に依存している州が利益を失う。案の定、日本でのG20でファーウェイへの禁輸の大部分を解いた。手打ちである。  G20閉幕の翌日、トランプは板門店に飛ぶ。そして、アメリカ大統領史上初、北朝鮮の地を踏み、非核化に向けてチームを形成することを公表した。これまた手打ちである。北朝鮮は中国の従属国である。ただし常に面従腹背で、「中国の頭越しに直接対話している」という格好が大事だ。北朝鮮としても、中国をギリギリ怒らせない程度に、「アメリカと話ができる」との姿勢を見せておくのは、自分の立場を強くする。東アジア情勢は、これで終わりではないが、一息ついたところだ。
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トランプは原理原則がはっきりしているので、行動が読みやすい
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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