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書くのも歌うのも「自分のため」――作家と歌手それぞれの創作を語る<爪切男×ましのみ>

「やっぱり女性はいつも一枚も二枚も上手なんですよね」

さらけだすことは、相手に溶け込んでいくこと

ましのみ:作中で、アスカが自分の曲に口出しされることに、すごく腹を立てる場面がありますよね。あそこは特に共感しました。私も昔恋人に音楽を送ることがあったけど、「いいね」って心の底から言ってくれている感じがしないと、本当にムカついてしまう。  アスカって自分のことをこれでもかってくらいさらけ出しているんですよね。私にとって「さらけ出す」という行為は、相手に溶け込んで、もともとふたり別々だった存在が一人になってしまような、そういうイメージなんです。 :少しわかるような気がします。 ましのみ:自分と相手の境界線が、限りなく曖昧になる。その状態になったときに、好きな音楽が違うって、大問題じゃないですか。ひとりの人間の中で、全く違う音楽がぶつかり合ってしまう。これは音楽に限らず、あらゆる価値観にいえると思うんですけど。だから、私は人に自分のことをさらけ出すのが怖いなと感じる。 :目の前の相手にさらけ出すのは、僕も怖い、というかできないです。だから僕は「小説」という形で、自分の半生をさらけ出した。それまでは誰にも弱い自分を見せることができなかったから、辛いことがあったら、昔の女性たちとの記憶を引っ張り出して、それを再生することで回復していました。 ましのみ:思い出で回復できるの、すごくないですか。 :どれも綺麗な記憶として保存できているからですかね。今まで出会った女性との記憶は、僕にとってどれも全て美しいものなんです。自分の過去に絶対許せないやつという存在がいないんです。 ましのみ:でも、実際には辛いことや大変なことがたくさんあったわけじゃないですか。 :僕は、辛いことがあっても、なるべく面白いほうにもっていこうとする癖があるから、嫌な記憶のままにはならないんですよね。そういえばこの間、喫茶店に入ったらオープンテラスしか席が空いてなくて、似合っていないのは百も承知でオープンテラスでホットのカフェラテを飲んでいたんです。そしたら、目の前に突然変なおじさんが現れて、僕のカフェラテに指つっこんで「大丈夫だな」って言ってきた。 ましのみ:はあ。 :だから僕、「火傷はしなかったか?」とだけ返しました。 ましのみ:怒りましょうよ! :怒るほうが疲れませんか。というか、おそらく幼少期の頃に、怒りとか憎しみとか殺意とか、すべてを発散しきったんだと思います。子供の頃に、父親も、親戚も、他の嫌な奴も全員、頭の中で消してしまった。小学生のとき、パラパラ漫画を作る授業があったんですけど、そこで僕が作ったのは、人が溺死とか窒息死とかさまざまな死に方をしていく「死に方大図鑑」です。そのあと校長室に呼ばれました。 ましのみ:爪さんにも、そういう破滅的な時期はあったってことですね。 :そういう自分が嫌になって、今は楽しくやっているのかも。
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自分のために作ったものが、誰かを救ってしまう不思議
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