書くのも歌うのも「自分のため」――作家と歌手それぞれの創作を語る<爪切男×ましのみ>
爪切男著『死にたい夜にかぎって』が賀来賢人主演でドラマ化、2月23日から放送がスタートした。そのオープニング主題歌を、シンガーソングライターのましのみ氏が歌う。「ろく(6)でもない僕」という意が込められたその曲「7」は、著者の爪氏に寄り添い、もはや爪氏が歌詞を書いたのではないかと思うほどに生々しい言葉が並ぶ。
「私はアスカにそっくりなんです」というましのみ氏は、爪氏のことを「共感はできないけど、理解はできる」と笑う。
女性目線での少しこじれた恋愛ソングを作ってきた23歳の彼女は、今回どのようにこの作品と向き合い、「7」を生み出したのか。そして、作中では彼女と「音楽」でわかり合えなかった爪氏は、この主題歌を聴いてどう思うのか。「主題歌」を軸に始まった爪氏とましのみ氏の対談は、その後お互いの恋愛観から人生観、そして創作の妙へと展開していく。
ましのみ:私、今回主題歌を作るために、何度も『死にたい夜にかぎって』を読んだんですけど、作中には本当に自分にとって救いになるような言葉がたくさんあって、爪さんのいい成分をたくさんもらったような気分です。
爪:ありがとうございます。主題歌を初めて聴いたとき、歌詞も歌の世界観も、原作をすごく読み込んでくれたことはすぐにわかりました。もちろんすごく嬉しかったけど、ちょっと怖くもあった。なぜましのみさんはこれほどまでに僕の心の内を理解して歌ってくれているのだろう、って。年齢も性別も今まで作ってきた曲も、全部が遠いように感じていたから。
ましのみ:そう言ってもらえると、すごく嬉しいです。この曲は、今まで音楽を作ってきた中で一番時間をかけて向き合ったので。とにかく、爪さんの価値観や考え方などを、私自身が本心で思えることに時間を費やしました。
爪:ましのみさんの本心で、ですか。
ましのみ:私は爪さんの代弁者になることはできないから、爪さんの気持ちをわかった上で、自分の言葉で歌いたい。だから、作品を何度も読んで、自分にとって印象的だった場面を思いつくままにA4の紙に書き出して、という作業を何度も繰り返していきました。そうすると、最初は裏表20枚くらい書き出していたぎこちない言葉が、どんどん洗練されて自分のものになっていく感じがするんです。
自分の中でも大切な部分が明確になって、余計な言葉が削ぎ落とされて、紙の枚数も減っていく。最終的には、爪さんの言葉や価値観がすっかり染み込んでいて、自然と言葉が自分の口からついて出るようになっていました。
爪:そこまで読み込んでくれていたからこそ、できた歌詞だったんですね。僕はこの曲を聴いたあと、担当編集と「やっとアスカと僕の曲が完成したね」と話したんです。
作中にもありますが、僕とアスカにとって、「音楽」はずっと大きな溝でした。ふたりの音楽の趣味が絶望的に合わなくて、彼女が作った曲の良さが僕には全くわからない。次第に僕が好きなUKロック調の曲を作ってくるようになったけど、彼女が本心で作りたいと思った曲ではないことが丸わかりで、僕も一応「いいね」とは褒めるけど辛かった。せっかく彼女が長い時間をかけて作った曲なのに、ふたりでままごとのような会話しかできないのがもどかしかった。
でも、こうやってドラマ化の機会をもらって主題歌ができたときに、心の底から「これは僕とアスカふたりの曲だ」って思えたんです。
僕たちの物語の「歌」がやっと完成したな、って
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文庫本:『死にたい夜にかぎって』 賀来賢人主演、連続テレビドラマ化決定! |
単行本:『死にたい夜にかぎって』 単行本も是非チェックいただきたい! |
『つらなってODORIVA』 MBS/TBS系ドラマ「死にたい夜にかぎって」オープニング主題歌「7」(ナナ)、 デジタルシングル「エスパーとスケルトン」ほか全5曲収録 |
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